燕連覇の「キーマンになる可能性」 五十嵐亮太氏が目を細める元守護神の成長

ヤクルト・石山泰稚【写真:荒川祐史】

古巣キャンプ訪問で目に留まった石山のブルペン投球

昨季は20年ぶり日本一という最高の結果を残したヤクルト。王者として迎える今季は、恒例の沖縄・浦添キャンプもいつも以上に活気に溢れている。そろそろ練習試合が始まろうかという2月中旬、連覇を目指す燕軍団のもとを訪れたのが、球団OBで解説者として活躍する五十嵐亮太氏だ。チーム、そして選手一人ひとりがどんな狙いを持ってキャンプを過ごしているのか、自らの目で確かめに出掛けた五十嵐氏の注意を引いたのが、10年目右腕の石山泰稚投手だという。

「訪問した日にちょうどブルペン投球を見ることができました。この時期でも体がしっかりできていたし、フォームが安定している。真っ直ぐが力強く、コントロールも良かったと思います。このオフは明確な目的を持って、そこに向かってしっかりトレーニングをしてきた感じが伝わってきました」

石山は昨季、守護神として開幕を迎えたが調子が上がらずに配置転換され、6月には登録抹消。だが、シーズン終盤にかけて復調し、最終的には58試合に登板するなど優勝に貢献した。接戦が続いた日本シリーズではたびたびの好救援で、オリックス打線の勢いを止めた。

「本人にとっては納得のいくシーズンではなかったし、非常に悔しい想いをしたと思います。なので、日本シリーズで掴んだ“いい感覚”を“いい感覚”のまま終わらせずに、そこからプラスαで何をしたら今年に繋がるのか。そこが本人には見えて、オフの割と早い段階からトレーニングを始めたのかなと思います。今年にかける意気込みも感じられたし、すごく順調に映りましたね」

ヤクルトOBで解説者として活躍する五十嵐亮太氏【写真:荒川祐史】

接戦の勝敗がチームの命運を左右「打てない試合でどれだけ勝てるか」

持ち味である力強いストレートが輝きを取り戻しつつある33歳右腕。このまま順調に開幕を迎えられれば、今季の「キーマンになる可能性は高いんじゃないかと思います」と五十嵐氏は言う。

「今のところ抑えはマクガフ、8回は清水(昇)になると思いますが、石山も抑えをしたり7回を投げたりすることもできる。プラス、今年から延長12回に戻るとなれば、彼をどう使うか、その果たす役割は重要になってくると思います。石山の働き次第で接戦をモノにできるかできないかが決まることもあるでしょう。連覇をするためには石山の存在は欠かせない、そんなキーマンになる可能性は高いんじゃないかと思います」

昨季の日本シリーズは、まさに接戦を制する大切さを物語るものだった。全6試合のうち5試合が1点差ゲームで、残り1試合もわずか2点差。競り負けないためには、まずリリーフ陣が相手打線を封じ込めなければならない。

「結局、シーズン中でも接戦で勝てるチームが上位に上がってくる。もちろん打線が爆発すれば勝つけれど、打てない試合をどれだけ勝てるかが大事。そうなった時、石山は勝ち負けを左右する局面で投げてもらいたい、結果を出してもらいたいピースであることは間違いないでしょう」

昨季の不振を経験し、投手としてさらに深みを増した石山が、まずはどんな役割を任されるのか。五十嵐氏が推すキーマンとして注目していきたい。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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