ローコストで投資ができるETFやETNって?自由な売買で人気の反面、注意点すべき点も

ローコストで手軽にさまざまな資産クラスに投資できるETF・ETNが人気を集めています。ただ、売買高や売買代金に注目すると、意外な面が見えてくるのも事実です。果たしてETF・ETNの本当の姿とは?


ETFのメリットとは

ETFが注目される理由は、冒頭でも触れたように、まずコストが非常に低いことが挙げられます。インターネット証券会社で売買すれば、売買にかかる取引コストは株式並みなので安いうえに、信託報酬の料率も極めて低率です。

しかも、株式と同じように取引所に上場されており、取引所が開いている時間帯ならいつでも自由に売り買いが出来ます。この2点がメリットということでETFが注目され、実際に個人投資家の間で人気を集めています。

またETFに近い特性を持っているETNという商品もあります。こちらは株価指数などに連動する仕組み債で、債券価格が連動目標となるマーケットに近い値動きをするということで、ETFと似た商品特性を持っています。

2021年12月末時点における、東証上場ETF・ETNの本数は全部で277本になります。国内の株価インデックスでは東証株価指数(TOPIX)や日経225平均株価、国際分散投資型ではMSCIコクサイ、海外の株価インデックスでは米国のNASDAQ100やS&P500、NYダウなどに連動するタイプがよく知られていますが、それ以外にもかなりニッチなインデックスに連動するタイプのETF・ETNもあります。

毎日取引が成立しないETF・ETNもある

こうしたニッチな株価インデックスに連動するタイプも含めると、ETF・ETNの投資対象はかなり多岐にわたっており、それゆえに投資家は幅広い選択肢から投資対象を選べるという点が、ETF・ETNの商品的な魅力とされることもあるのですが、この点についてはいささか注意が必要です。

というのも、あまり知られていない株価インデックスに連動するETF・ETNは、自由に売買できない恐れがあるからです。2021年12月の営業日数は22日です。したがって、日々取引が行われているETF・ETNであれば、取引価格が付く日数も22日になります。

ところが、東証上場ETF・ETNの中には、取引価格が付く日数が22日に満たないものもあります。2021年12月中の数字を見ると、値付日数が22日だった銘柄数は、277本のうち217本でした。また19本のETF・ETNについては値付日数が11日以下です。つまり1カ月の営業日数のうち半分の日数でしか取引が成立しなかったことを意味します。

ニッチな株価インデックスに連動するタイプは流動性リスクに注意

では、取引が成立しにくいETF・ETNにはどのようなものがあるのでしょうか。これはファンド名を見れば明らかですが、とにかくニッチな株価インデックスに連動するタイプのものばかりです。

たとえば値付日数が22日のうち2日しかないのは、「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)受益証券」と「MAXIS JAPAN設備・人材積極投資企業200上場投信受益証券」の2銘柄ですが、正直、ファンド名を見ただけでは、どのような株価インデックスに連動するのか、皆目見当がつかないというのが正直なところです。

その他にも「NEXT NOTESニッチトップ中小型日本株(ネットリターン)ETN受益証券」(値付日数5日)、「NEXT NOTES低ベータ50(ネットリターン)ETN受益証券」(値付日数6日)、「ダイワ上場投信―MSCI日本株人材設備投資指数受益証券」(値付日数7日)などがあります。いずれも1か月間の営業日数のうち、取引価格が付いて売買が成立した日数はごくわずかです。

取引価格が付かないということは、売買できないということでもあります。つまりETF・ETNは、「いつでも売買できるというメリットがあります」と一般的には言われていますが、ほとんど知られていない、ニッチな株価インデックスに連動するタイプのETF・ETNになると、自由に売買できない「流動性リスク」を考慮しておく必要が生じてくるのです。

売買高と売買代金にも注意

もうひとつ注目しておきたい数字があります。月間の売買高と売買金額です。

2021年12月中の売買高で最も大きかったのは、「NEXT FUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信受益証券」です。月間の売買高は10億7046万837口で、売買代金は総額4288億4724万491円でした。

これに対して売買高が最も小さかったのは、「MAXIS JAPAN設備・人材積極投資企業200上場投信受益証券」の2口で、売買代金の総額は、たったの6万120円でした。売買高や売買代金が小さい銘柄は、値付日数が多かったとしても、やはり流動性リスクが高いと考えた方が良いでしょう。

たとえば「NZAM上場投信S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数受益証券」の値付日数は22日なので、2021年12月の全営業日数において取引が行われていることになりますが、この間の売買高は2万5750口で、売買代金は643万2238円です。これを22日で割ると、1日あたりの平均的な売買代金は29万2374円でしかありません。1日あたり平均とはいえ、これだけ1日の売買代金が小さいと、多めの買い注文や売り注文が入った時、取引価格が付かないまま気配値が乱高下する恐れがあります。

ETF・ETNは、純資産価格こそ連動目標である株価インデックスなどに連動するようになっていますが、市場で付く取引価格は需給を反映するため、純資産価格から乖離して上下するケースも考えられるのです。

したがって、株価インデックスなどに出来るだけ連動した運用成果を得るためには、値付日数と共に売買高や売買代金が出来るだけ大きな銘柄を選ぶ必要があります。
なお、月間の売買高や売買代金、値付日数は東京証券取引所のサイトに掲載されているので、それを参考にすると良いでしょう。

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