メクル第607号<旬感V V・ファーレン(1)> MF笠柳翼 18歳(背番号33) MF五月田星矢 19歳(背番号34) MF安部大晴 17歳(背番号35)

 サッカーのJ2リーグ2022シーズンがいよいよ、きょう開幕(かいまく)。V・ファーレン長崎は、J1昇格(しょうかく)に向けて負けられない戦いが始まります。“旬(しゅん)”な選手を紹介(しょうかい)する「旬感V・ファーレン」も合わせてスタート。どういう経験(けいけん)をしてプロ選手になったのか、ピッチで何を感じながらプレーをしているのか。選手の胸(むね)の内に迫(せま)ります。
 今回は、10代Jリーガー3人が登場します。ともに昇格を目指す仲間であり、ライバルでもある笠柳(かさやなぎ)選手、五月田(さつきだ)選手、安部(あべ)選手。これから長崎で輝(かがや)きを放つため、サッカーとどう向き合っているのか聞きました。

 ■MF 笠柳翼(かさやなぎ・つばさ) 18歳(背番号33) 楽しみながら日々努力

「課題をしっかり改善して試合に絡む」と語る笠柳選手

 「サッカーを楽しむ」。その一心でボールを追(お)い掛(か)け蹴(け)っていた少年時代。Jクラブの下部組織(そしき)に所属(しょぞく)していたときは、「プロになる」という意識(いしき)はあまり強くありませんでした。
 高校進学を考えていた中学2年のとき、全国高校サッカー選手権(せんしゅけん)決勝で前橋育英のサッカーに魅了(みりょう)され「ここだ」と決心しました。神奈川(かながわ)県から群馬(ぐんま)県に行くことに両親は最初、不安を抱(いだ)いていました。「最後は自分の思いを認(みと)めてくれて、背中(せなか)を押(お)してくれた。プロになって恩返(おんがえ)しする」と責任(せきにん)と覚悟(かくご)が芽生えました。
 前橋育英での3年間は、自分との戦いでした。常(つね)に自身と向き合いトライアンドエラーを繰(く)り返(かえ)し成長。3年のときの選手権は準々決勝(じゅんじゅんけっしょう)で敗退(はいたい)しましたが、「今までにない思いが詰(つ)まった時間。みんなといい思い出ができた」と振(ふ)り返(かえ)ります。
 昨年7月、V長崎の練習に参加、5日間プロの実力を肌(はだ)で感じました。「サッカーの強度やスピードはもちろんですが、練習以外の姿勢(しせい)にプロフェッショナルを感じた」。この世界でサッカーをしたいと再認識(さいにんしき)しました。
 迎(むか)えた今年1月からのキャンプで感じた課題は守備(しゅび)やフィジカルの部分。「現実(げんじつ)を見て、最初の1年は厳(きび)しくなると自覚している。改善(かいぜん)しながらどれだけ試合に絡(から)めるかフォーカスする」。良い環境(かんきょう)と高いレベルでプレーができると思い加入したV長崎。「人間的に成長するため」と早稲田(わせだ)大健康福祉(ふくし)科学科の通信課程(かてい)で学びながら、今のU-18日本代表からフル代表に選ばれるため、サッカーを楽しみながら努力を続けます。

 ◎少年たちへ
 「小さなことから楽しんでやってほしい。誰(だれ)にも負けない気持ちと、人一倍努力を。どんなにきつくても自分に打ち勝ってほしい」

 ■MF 五月田星矢(さつきだ・せいや) 19歳(背番号34) プロ2年目 「飛躍」誓う

「昨年、積み上げてきたものは確実にある」と語る五月田選手

 「試合に出られないと、メンタルが不安定になるんだなって初めて知りました」。プロとして過ごした最初の1年間を振(ふ)り返(かえ)ります。
 サッカーを始めて、V長崎U-18までは常(つね)に試合に出場していました。「ずっとピッチに立てないと、メンタルが弱くなると分かった。自分を知るということは大事。メンタル面で大きく成長できたし、プロの世界で通用するための身体的、技術(ぎじゅつ)的な土台が築(きず)けた1年間だったと思う」。どんな状況(じょうきょう)になってもポジティブに捉(とら)えています。
 小さいころから生活の一部になっていたサッカー。「プロ選手になって活躍(かつやく)する」。そう決めたときから「逆算(ぎゃくさん)」して生活していたと言います。「やれると信じた上で、短期、中期、長期の目標を立て、アカデミーに所属(しょぞく)しながらトップチームの試合に出場するには、高校1年でこのレベルに到達(とうたつ)する必要があるとか、そのために何をすべきか」などと細かく分析(ぶんせき)していました。
 自身と向き合うため、高校生のときから「サッカーノート」は今でも書き続けています。最初のページに今年の目標「リーグ戦に出場」と書かれています。「選手は、やっぱり試合に出ないといけない。生(い)き抜(ぬ)くため、次の目標のために何も始まらない。そのために練習からこだわってやっていきたい」と気持ちが高ぶります。
 今年のテーマは「飛躍(ひやく)」を掲(かか)げます。「昨年、積み上げてきたものは確実(かくじつ)にある。自信を持って取り組んできたので、グラウンドで見せたい」

◎少年たちへ
 「夢(ゆめ)に向かって、具体的にどういう行動が必要かと考えることが大事。ただ練習するのではなく、工夫しながら練習してほしい」

 ■MF 安部大晴(あべ・たいせい) 17歳(背番号35) 世界を見据える高校生

「世界基準で17歳のプロ契約は決して早くない」と語る安部選手

 V長崎U-18に加え、トップチームに所属、飛び級でU-18日本代表に選出された。そして高校の授業。多忙(たぼう)を極めた2021年を「成長するために良い機会だった。忙(いそが)しいというより、ほかの人ができないようなことを経験(けいけん)できたことが大きい」と笑顔を見せます。
 昨年は誕生日(たんじょうび)を迎(むか)える9日前に16歳(さい)ながらトップチームデビュー。昨年5月、ホームのレノファ山口戦で松田監督(まつだかんとく)から呼(よ)ばれると「点を決めて来い」とピッチに送り出されました。得点チャンスもありましたが、あと一歩。最初の出場時間は4分間でしたが緊張(きんちょう)より楽しさが勝りました。
 その後、4試合で計32分間プレー。「攻撃(こうげき)はもっと前を向かないといけないし、守備(しゅび)もスライド部分やコンパクトさを保(たも)つため、仲間に声掛(こえか)けをして意思統一(とういつ)しないといけない」と課題が見えました。
 今年1月6日にプロ契約(けいやく)しました。県内初の「現役(げんえき)高校生Jリーガー」という言葉に対してはプレッシャーは感じません。「久保建英(くぼたけふさ)選手(マジョルカ)や堂安律(どうあんりつ)選手(PSV)は早くからJのピッチに立ち、多くの試合を重ね、世界と戦い日本代表に上(のぼ)り詰(つ)めている。『17歳』は世界基準(きじゅん)で考えたとき、決して早い年齢(ねんれい)ではない」と力強く語ります。
 9歳から入団(にゅうだん)して“V長崎一筋(ひとすじ)”の17歳は「プロ」として迎える1年目を「チームの結果の中に、個人(こじん)の結果がある。J2優勝(ゆうしょう)、J1昇格(しょうかく)をするチームの中でしっかりアピールしていきたい」と目を輝(かがや)かせ、その先の世界を見据(みす)えます。

◎少年たちへ
 「きょうより明日の自分がサッカーが上手になる意識(いしき)を持ってほしい。しっかり未来を見続けてサッカーを大好きになって」


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