長崎県知事選 現職の中村さん 経験と実績届かず「心からおわび」

敗戦の弁を述べる中村さん=20日午後11時38分、長崎市出島町の県JA会館

 午後11時半ごろ、長崎市出島町の県JA会館に「落選」見通しの一報が届き、支援者は静まり返った。重い空気が漂う中、マイクを握った中村さんは深々と頭を下げ、「力不足。心からおわび申し上げる」と述べ、3期12年、そして今回の選挙活動を支えてくれた人たちへ感謝を伝えた。
 投票締め切り早々に「当選確実」となった過去3回とは事情が違った。これまで支援・推薦を受けてきた自民党県連は相手陣営に回った。党県議の約半数がこれに反発。立憲民主、国民民主両党や首長、経済界とともに「県民党」の名の下に結集。推薦団体は2千を超えた。
 だが自陣にもたらされる情勢は日増しに厳しくなった。報道各社の世論調査は「接戦」「大石さん先行」。県農政連盟や連合長崎は「このままでは危ない」とてこ入れを図ったが、思うように浸透しなかった。
 新型コロナのまん延防止等重点措置下、中村さんは選挙期間中も感染対策の公務に追われた。選挙カーに乗ったのは後半のわずか6日間。有権者に自分の口から思いを届ける機会は限られた。それでも、会員制交流サイト(SNS)による情報発信に加え、インターネット上にメタバース(仮想現実空間)「ほうどうルーム」を開設し有権者と交流するなど、若者世代を巻き込んだ先駆的な姿勢を見せた。
 「ふさわしい人に長崎の未来を託したい」。昨年12月まで国会議員と共に後継を探したが、数人に断られ、見つからなかった。4選を目指したのは、県政の継続を求める多くの声に応えなければならないという責任感だった。県職員時代から約半世紀にわたって県政に貢献してきた中村さん。支援者からは大きなねぎらいの拍手が送られた。


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