投資信託でインデックスファンドが人気な理由、コストが安いはいいファンド?気になる問題点

ローコストということで個人に人気の高いインデックスファンド。最近のインデックスファンドの信託報酬率は年0.15%程度と、ETFと比べても遜色のない程度に下がっており、それが一段と個人からの人気を高めています。


インデックスファンドが人気化した理由

インデックスファンドとは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価インデックスに限りなく連動した値動きを目指す投資信託のことです。ここ数年は、日本の株価インデックスよりも、S&P500やニューヨーク・ダウ30といった米国を代表する株価インデックスや、MSCIコクサイのような世界中の株式市場に分散投資したのと同じ投資効果が期待できる株価インデックスへの連動を目指すタイプが、個人の人気を集めています。

インデックスファンドがなぜ人気を集めているのか。理由は2つ考えられます。

第一は、「どんなアクティブファンドも長期的に見ればインデックスファンドに勝てない」と言われていること。第二は、アクティブファンドに比べて信託報酬率などのコストが極めて低廉であることです。この2つを主要因として、ここ数年、個人の間ではインデックスファンドブームが起きました。

インデックスファンドの成績が長期的見て必ずアクティブファンドよりも良いのかどうかについては、何とも言えません。アクティブファンドの中には、優れた運用者がいて、インデックスファンドを上回る成績を出しているファンドもあります。

ただ、優れた運用者が担当するアクティブファンドを見つけることができるのか、という点が非常に難しく、アクティブファンドは当たり外れが大きくなります。この点、インデックスファンドは市場平均のリターンを実現するために運用しているので、当たり外れがかなり小さいという特性を持っています。つまりインデックスファンドの方が選びやすいのです。

加えて、信託報酬率がかなり低廉です。現在、個人の間で人気が高いインデックスファンドの信託報酬率は、年0.15%程度です。これがアクティブファンドになると年1.5%~2.0%くらいかかりますが、このコスト差が最終的なリターンに及ぼす影響は無視できないという声も多く、インデックスファンドの人気に拍車をかけました。

持続可能な競争か?

ただ、インデックスファンドで気になるのは、このローコスト競争がどこまで続くのかということです。

かつてインデックスファンドの信託報酬率は、年0.7%~1.0%程度はありました。それが今では年0.15%前後ですから、物凄いディスカウントが進んだことになります。もちろん、インデックスファンドを購入する個人からすれば、コストは安いに越したことはないということになりますが、それは果たして持続可能なものなのでしょうか。この点をしっかり考える必要があります。

最近、インデックスファンド界隈で注目されているのは、信託報酬率の一物多価問題です。同一運用会社が運用する、同じ株価インデックスへの連動を目指すインデックスファンドなのに、信託報酬率に差があるという問題です。金融庁がフィデューシャリー・デューティーの面でこれを問題視したことから、大手運用会社はその一律化を進め始めました。

この点については、某大手運用会社が一律年0.5%にしたなどと報道されましたが、実はこの運用会社が運用しているインデックスファンドの中には、信託報酬率が年0.1%のものがあったのにも関わらず、そこまでは引き下げませんでした。なぜなら全インデックスファンドの信託報酬率を、年0.1%の方に寄せて引き下げてしまうと、いくらたくさんインデックスファンドを売っても、全く収益に寄与しなくなる恐れがあるからです。

投資信託会社も営利企業ですから、利益が出ないファンドを運用し続けるわけにはいきません。ローコストファンドが増えるのは、投資家からすれば良いことかも知れませんが、際限なきコスト引き下げ競争は必ずどこかで限界を迎えます。

インデックスファンドも経費はかかる

では、なぜ「インデックスファンドはローコストで運用できる」と思われているのでしょうか。それはアクティブファンドの場合、企業リサーチなどに高い経費が掛かる一方、インデックスファンドは連動目標となる株価インデックスに連動させるだけなので、リサーチ経費が掛からない分だけコストを抑えられると思われているからでしょう。

でも、インデックスファンドも経費は掛かります。多少なりとも人件費が掛かりますし、各種管理コストも必要です。それにインデックスファンドの場合、インデックスの使用料を、そのインデックスを算出している会社に支払わなければなりません。たとえば日経平均株価であれば、日本経済新聞社にライセンス料を支払うことになるのです。

このライセンス料は、指数を算出している会社と運用会社との間の個別交渉で決められるため、一律に何%かと言えないのですが、経済誌に書かれていた数字によると、ファンドの資産残高に対して年0.01%~0.03%程度掛かるそうです。これらを総合すると、「たとえインデックスファンドでも年0.5%程度の信託報酬を取らないと厳しい」と、某運用会社の経営者が言っていました。

つまり、年0.15%前後でコスト引き下げ競争にしのぎを削っている現状は、運用会社として、かなり無理をしていることになります。

それでも信託報酬率の引き下げ競争を続けられているのは、他のアクティブファンドで高めの信託報酬を取っているからとも考えられます。

ただ、それはアクティブファンドの受益者の犠牲によって実現しているローコストなので、あまり健全とは言えませんし、そこまで無理をした競争は、いずれ破綻をきたすことになると思うのです。

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