大接戦

 999人の市民が集まった広場-を想像してほしい。ドアの二つある建物の中に人々が1人ずつ入っていく。まるで示し合わせたように右、左、右、左…と代わりばんこにドアが選ばれ、さて、最後の1人の選択は…▲大接戦の興奮や余韻がまだ収まらない。一昨日の知事選、初当選を果たした新人候補と敗れた現職の票差は541票。得票率の開きは1000人のうちの1票、どちらに転んでもおかしくなかった。ただし-▲4年前の知事選に比べて投票率が11ポイント上がり、投票数は12万票近く増えたのに、現職は逆に得票を7万3千票減らしている。もちろん、選挙構図の違いは考慮しなければならないが、今の県政に対する有権者の採点は厳しかった▲他県の知事たちの発信力豊かな姿を何回となく目にしたのは、新型コロナの思わぬ副産物だった。一度は退任を決意した、と4選出馬表明の会見で明かした現職の正直な告白には首をかしげた▲決定的な失策は思い当たらず、手堅く県政を運営してきた現職の3期12年間だった。日曜日、あんなに寒くなかったら、感染状況が少し違ったら…選挙結果も違ったかもしれない。でも思う。負けに不思議の負けなし▲ずしりと重い1票の力をまざまざと実感させた選挙。日本一若い39歳の新知事を長崎に誕生させた。(智)

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