感染爆発で逼迫、疲労感 調査や健康観察の縮小余儀なく 栃木県内保健所

新型コロナ対応に当たる県西保健所。感染急拡大を受け、白板5枚の両面が感染者や発生施設の情報で埋まっている=21日夜、鹿沼市今宮町

 オミクロン株による感染爆発で1週間当たり約5千人の新規感染者の発生が続く中、県内の保健所業務はこれまでになく逼迫(ひっぱく)している。1月には保健所の体制を強化したものの、飽和状態。重症化する可能性の高い感染者への対応を優先し、濃厚接触者を追う積極的疫学調査や、自宅療養者の健康観察の縮小を余儀なくされた。

 「陽性者の方と接触した心当たりはありますか」

 21日夜、鹿沼市今宮町の県西(けんさい)保健所。職員が電話で感染者から症状や行動歴を丁寧に聞き取っていく。

 医療機関からの発生届は夕方以降に集中するため、保健所の業務は深夜まで続く。パソコンに向かう職員の顔にも疲労が漂う。

 感染が比較的少ない鹿沼、日光両市を管轄する同保健所。それでも新規感染者は1日平均50~60人に及ぶ。自宅療養者も500人を超えており、職員総掛かりで健康観察や疫学調査に当たっている。

 国の通知を踏まえ県は11日から、疫学調査の対象を陽性者本人のほか医療機関、高齢者施設など重症化リスクが高い人たちが入る施設に絞り込んだ。

 「リスクの高い感染者を埋もれさせないために優先順位を付けざるを得ない」と県西保健所の渡辺晃紀(わたなべてるき)所長は、調査の縮小に口惜しさをにじませる。

 結果的に事業所などで陽性者が出た場合は調査を行わず、管理責任者に対応を委ねている状況だ。

 毎日電話で行ってきた自宅療養者の健康観察も、高齢者や基礎疾患のある人などに限定。それ以外の人は療養初日と療養解除日のみ連絡する形とした。

 県は1月以降、五つある県保健所に職員計約80人を配置し体制を強化。それでも現場の負担感は改善されず、感染者が多い県南、安足両保健所は特に業務が逼迫しているという。

 県感染症対策課は「絞り込まないと保健所が回らない。それだけの感染者が発生している」と説明。県のホームページでは職場や学校で感染者が出た場合の対応や、自宅療養の際の注意点などを詳しく紹介している。

新型コロナ対応に当たる県西保健所。感染急拡大を受け、白板5枚の両面が感染者や発生施設の情報で埋まっている=21日夜、鹿沼市今宮

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