パートを減らして企業した妻「想像以上にお金が貯まらない」兼業個人事業主の落とし穴

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、会社員の夫と二人の子どもと暮らす35歳の女性。1年ほど前からパートの時間を減らして自営業を始めた相談者。家計は黒字にはなっているものの、思ったよりお金が貯まらないのが悩みだといいます。原因は、働き方が変わって収支や社会保険が変わったため? FPの横山光昭氏がお答えします。


お金を貯めたいのですが、思うように貯まらず困っています。

夫は会社員ですが、私は1年ほど前に以前からやりたかった自営業を始めました。以前は週5でパートをしていたのですが、自営業の収入はまだ十分ではなく、パートは日数や時間を減らして続けています。

自営業の帳簿付けと合わせて家計簿も付けており、数字上は黒字になっていると思っています。年末の銀行残高も若干プラスになっていました。ですが、それでも貯金が思うようには増えません。

いま、子ども二人は保育園。これから教育費もかかるでしょうし、夫婦の老後資金、親の介護資金など、お金を貯めなくてはいけない事柄が沢山あります。なんとか貯められるようにしたいのですが、どのようにしていくとよいでしょうか。

【相談者プロフィール】

相談者:35歳、自営業・パート

・夫:38歳、会社員 ・長男:4歳・保育園 ・次男:2歳・保育園

・手取り収入:月収38万1,000円(夫24万3,000円+相談者自営業収入7万円+相談者パート6万8,000円、年間ボーナス夫約80万円

・貯蓄額:貯金320万円

・毎月の支出の目安:34万6,000円

【毎月の支出の内訳】

住居費:9万1,000円(ローン)

食費:5万6,000円(外食含む)

水道光熱費:1万8,000円

通信費:1万円(スマホ2台)

生命保険料:9,000円

日用品代:1万1,000円

医療費:5,000円

教育費:5万2,000円

交通費:4,000円

被服費:5,000円

交際費:3,000円

娯楽費:4,000円

小遣い:6万円

その他:4万9,000円

国民健康保険・年金保険料:2万3,000円

横山:自営業を始められ、収入が減ってしまったのですね。パートで減った分をカバーしているということですが、逆に増えた支出はないでしょうか。お金が貯まらないのは、把握しきれていない支出が増えた影響である可能性もあります。

変化した支出をきちんと把握しておこう

パートだけの収入から、自営業+パートとなりましたが、支出はどのように変わったでしょうか。家計というよりも、自営業の経費などが今回の悩みに影響しているのではないかと思えます。

場所代、仕入れ、広告費、勉強代など、業種により異なりますが、自営をするにもいろいろと経費がかかります。事業にかかるお金の中でこれらを清算し、収入分だけを家計に入れているのであればいいのですが、時々これらを家計とごちゃまぜにしてしまう方もいます。その場合、家計が非常にわかりにくくなってしまうので、気を付けたほうがよいでしょう。

また、週5でパートに入っていたということは、社会保険などもパート先で入っていたのではないでしょうか。自営業を始めるにあたり、勤務時間や給与面での条件が外れ、国民健康保険や国民年金保険料の負担が増えたのではないかと思います。

気が付かないうちに生活費以外の支出が増え、それがお金が貯まらない原因になっているのではないかと考えます。こういった支出も一度整理をし、やりくりの仕方を検討してみましょう。

社会保険に加入する働き方という選択肢も

ところで、自営業が収入の軸になるなら、社会保険は国民健康保険、国民年金保険となりますが、もう一度パート先の社会保険に加入する働き方をする選択肢はないでしょうか。現在のパート収入から見ても、結構な時間をパートに使われているのではないかと思います。このままの状態がもう少し続くのであれば、そこからもう少し働く時間を増やし、

・1週間の労働時間が20時間以上
・月の賃金が8万8,000円以上
・雇用期間が1年以上見込める(令和4年10月からは2カ月以上に)
・被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所(令和4年10月から100人以上に)

という条件を満たした働き方をし、健康保険、厚生年金保険に加入してもよいと思います。ご存知かと思いますが、これには国民健康保険、国民年金にはないメリットがあります。

国民年金には傷病手当金、出産手当金の制度がありませんが、会社の健康保険にはあります。また、厚生年金には国民年金に上乗せされる年金がありますし、遺族年金、障害年金を受けるような場合にも上乗せがあります。加入可能な年齢も70歳までと長く、加入して働くほど、年金受給額を増やすことができます。

今後、自営業のほうに力を入れ、そちらでやっていく可能性もあると思いますが、厚生年金は加入するほど将来の年金額を増やせますから、今のうちに厚生年金にかけておく、という考え方もできます。給与の手取り額は減るかもしれませんが、家計から支払う国保・年金保険料がなくなりますから、家計管理的には、スッキリするという面もあります。

支出は「振り返り」「行動」で改善を

家計簿を付けているということですが、振り返りはされていますか。収支を把握し、家計を改善するには、支出の振り返りが非常に大切です。例えば、今の家計状況を見ると、教育費が5万円以上かかっています。これは2歳のお子さんの保育料と、4歳のお子さんの習い事なのかと予想できますが、保育料については3歳になると無償化の対象となりますから今後負担は減ることがわかります。また、習い事が過剰ではないかと振り返ることで、教育費のかけ方を検討していくこともできます。

「スマホ2台分の使用料が1万円は高いのかも?」「その他が5万円近いけれど、その内訳が分かれば支出を下げられるかも?」などと気が付けることは沢山あります。その気が付いたことに対し、行動を起こし、改善につなげていくのです。

家計簿をつけているだけでは、家計はよくなりません。家計の改善点を見つけても、行動しなければ、やはり家計は改善しません。振り返る、行動に移すことが不可欠です。特に働き方が変わるときは収支が変動しますから、より注意をして家計を振り返っていただけると、今後のトラブルも防げますし、今後おこりうる問題に備えていくことも可能になるでしょう。一度しっかりと家計状況を見て、今後相談者様ご夫婦ができることを考えてみてください。

© 株式会社マネーフォワード