【F1バルセロナテスト2日目会見】新型マシンは「高速コーナーで安定」「バウンシングが大きい」とドライバーの感触はさまざま

 開幕前の最初の合同テストが、バルセロナ-カタロニア・サーキットで始まった。車体の技術規約が大きく変わり、外見だけでも2021年までとは様変わりした今季のF1マシン。実際に操るドライバーたちは、どんな感触を得ているのか。新チャンピオンのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、初日から速さを見せるシャルル・ルクレール(フェラーリ)、ベテランのセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、そして2年目の躍進が期待される角田裕毅(アルファタウリ)のコメントを聴いてみよう。

 2022年のマシンはフロア下で強大なダウンフォースを発生する、いわゆるグラウンドエフェクトカーだ。さらに足回りの電子制御は、ほぼ禁止された。そのせいだろうか、初日を走り終えて特に注目されたのが、ひどいバウンシング(縦揺れ)だった。

──今季のマシンは非常に乗り心地が硬いと聞いています。ストレートでのバウンシングも酷いですね。実際のところ、どうなんでしょう。
フェルスタッペン:2021年までに比べたら、硬いのは確かだね。でも特に気にするほどじゃないし、クルマ自体は運転していてすごく楽しい。まだ1日走っただけで、学習途中だけどね。とはいえ挙動は、とてもキビキビしている。バランスはまだ完全じゃないけど、高速コーナーは安定しているよ。先行車にも、去年よりは簡単に近づける感じかなあ。あくまで若干だけどね。ダウンフォースが抜けて、アンダーステアからいきなりオーバーステアになったりとか、そういうことはない。もちろんまだレーシングスピードで走ってないこともあるけど、クルマは完全にコントロールできているよ。

2022年F1バルセロナテスト1日目 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

──タイヤはどうですか?
フェルスタッペン:大きくて、視認性にちょっと難ありかな。バルセロナだったら問題ないけど、市街地サーキットを走るときはあの大きなフィンのせいで、けっこう苦労するかもしれない。

アロンソ:去年の車に比べると、秒単位で遅くなっている。それは走っていても、もちろん感じるね。ただこれからどんどんタイムは縮まっていくだろうし、そこは心配していない。

2022年F1バルセロナテスト1日目 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

ベッテル:運転する楽しさ自体は、去年までと変わっていない。ただクルマはすごく重くなった。おそらくフェルナンドと僕だけだと思うけど、すごく軽かった頃のF1マシンを知っている者としては、運転していてかなりの重さを感じるね。でもクルマ自体はダウンサイズしているし、とにかく楽しいよ。

ルクレール:まったく新しい車になって、ドライビングスタイルも当然それに合わせないといけない。そこはすごくチャレンジングだよね。でも楽しんでいるよ。

──具体的にどの部分で、合わせないといけない?
ルクレール:重くなったところだね。たとえばブレーキングの際の挙動は、去年までと全然違う。制動距離自体はそんなに変わらないけど、とにかく止まり方が違う。完璧な止まり方、スイートスポットがどこにあるのか、まだ探りながら走っているよ。

角田:走ってる最中のバウンシングは、確かにかなり大きいですね。特に直線や高速コーナーなど、速度域の高いところで強く感じます。あんまり揺れすぎて、記憶が飛ぶくらい(一同笑い)。でも速く走れることが大事だし、挙動に問題が出るほどじゃないです。

2022年F1バルセロナテスト2日目 角田裕毅(アルファタウリ)

■「ドライビングスタイル次第でけっこういろいろなことがやれそう」と角田

 一方で2022年のクルマは、ドライバーの腕がよりモノを言うという見方もある。

──自分の運転次第で、去年以上に違いが出せると思う?
角田:まだ1日走っただけだし、ピエール(・ガスリー)が同じクルマでどんな走りをするか、どんなタイムを出すかまだ見ていないので、何とも言えないですね。でもドライビングスタイル次第でけっこういろいろなことがやれそうなので、そこは楽しみにしています。特にロングランでのタイヤの持たせ方とか、F2でやれていたことが今年のF1ではできるのかなと期待しています。

──2年目の今年は、1年目の去年とは違う感じですか。

角田:まったくそうですね。何よりクルマが全然違う。去年はルーキーでしたけど、経験を積んだ今年は、しっかりクルマを開発することもチームから求められている。今年は特に、ドライバーの開発能力が重要になると思う。チームメイトのピエールと一緒に、彼らの期待に応えたいと思います。新車はまだ乗り始めたばかりですが、いい感触です。何より乗っていて、すごく楽しいです!

2022年F1バルセロナテスト2日目 角田裕毅(アルファタウリ)

アロンソ:道具の良し悪しが結果を大きく左右するF1にしても、やっぱり人間が操るスポーツであるべきだ。そしてその要素が、今年のクルマは大きくなっているんじゃないかと思う。もちろんドライバーの腕でラップタイムが1秒も速くなることはないだろうけど、でもどれだけやれるか楽しみだよ。

ルクレール:最終的にはそれほど大きな違いは出ないかもしれない。でもシーズン序盤は特に、いかに自分の運転スタイルをクルマに合わせられるかで、チームメイトに差をつけることができると思ってるよ。

2022年F1バルセロナテスト2日目 シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 と、ここまでは和やかな雰囲気で会見は進んだ。しかしロシア軍による突然のウクライナ侵攻は、F1にも暗い影を落とした。それについてコメントを求められたドライバーたちのなかで、もっとも自分の意見を鮮明にしたのがベッテルだった。

──ロシア軍のウクライナ侵攻で、ロシアGP開催も疑問視されています。セバスチャンはGPDAリーダーですが、これについて話し合う予定は?
ベッテル:今のところはないかな。ただ個人的には、朝起きてこのニュースに接したときは、とにかく大きなショックを受けた。そして悲しくなった。TVから流れる映像はとにかく悲惨なものだった。あくまで僕個人の意見だけど、この状況でロシアGPを開催することは間違っていると思う。馬鹿げた理由で無実の一般市民が命を失ったりするのは、決して許されることじゃない。僕自身は、すでに決断を下しているよ。

「決断を下した」とは、どういうことなのか。たとえF1が予定通りロシアGPの開催を決めたとしても、ベッテルは参戦を拒むということか。いずれにしてもこれ以上の犠牲が出る前に、1日も早く戦果が止むことを祈ってやまない。

2022年F1バルセロナテスト2日目 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

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