ウクライナ侵攻 露の核使用示唆 被爆地長崎から怒り「世界が抗議の声を」

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器使用を示唆する発言で威嚇したことに対し、被爆地長崎からは25日、強い抗議や懸念の声が噴出した。
 ロシアを含む核保有五大国は1月、核戦争回避を最重要責務と明記した共同声明を発表した。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(81)はこれに触れ「『核戦争に勝者はいない』と言いながら核使用をほのめかした。本当にけしからん。世界中が抗議の声を上げるべきだ」と憤った。県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(78)も「核兵器禁止条約があるのに核大国が核で威嚇した。怒りを通り越してあきれる」と非難した。
 田上富久長崎市長は「被爆地長崎は強い憤りを感じている。『二度と同じ体験をさせてはならない』との被爆者の切なる思いを踏みにじる言動。第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない」とのコメントを発表した。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は、核によるどう喝や軍事行動が核不拡散条約(NPT)の核軍縮交渉義務に背く行為に当たるとして「ロシアの責任は極めて重い」と批判する。
 ウクライナでは計15基の原発が稼働し、ロシアは解体廃炉作業中のチェルノブイリ原発も占拠した。レクナは、原発攻撃の可能性を「少ない」とみる一方、「戦闘による大規模停電や原発運転員の抵抗、逃走による事故など、不測の事態も危ぶまれる」と警戒する。
 米英露は、ソ連崩壊後のウクライナに残った核兵器を放棄させる見返りに安全を保証する「ブダペスト覚書」を同国と交わした。だが欧米諸国は今回の侵攻がこれに反すると指摘している。レクナは「安全保障上の脅威に直面する他国も同じ目に遭うのを恐れ、核拡散につながる懸念がある」として、北朝鮮の非核化やイラン核合意の修復に向けた協議への影響も危惧している。


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