少年野球の部員集めは“口コミ”が一番 総勢80人超、子どもたちが集まる理由とは

少年野球の部員集めは“口コミ”が一番と話すその理由は?(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

全国制覇3度の「多賀少年野球クラブ」は“卒スポ根”を掲げる人気チーム

滋賀・多賀町で活動する少年軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」は全国大会優勝3回、楽天・則本昂大投手が所属した強豪であるだけでなく、部員数80人を超える人気チームでもある。なぜこんなにも人気なのか。2月20日に東京・足立区の室内練習場「フィールドフォースボールパーク」で行われた指導者講習会で辻正人監督がメンバー集めの極意を明かした。

野球人口が減っている中、多くの少年野球チームはホームページやポスターなど様々な手法を使ってメンバー集めに奔走している。ただ、辻監督が大事にしているのは保護者の“口コミ”だ。「立派なホームページ、ポスターを制作しても集まらないんです。人が人を連れてくるんです」。大事なのは保護者が他人に勧めたいチーム作りをすることだ。

自身も元々は、各学校にチラシを配り、熱心に宣伝活動をしていた。当時から全国大会常連の強豪だったが、部員数は20人程度だった。部員増のきっかけは指導方針を変えたことだった。“卒スポ根”を掲げ「楽しく強く」をモットーに改革。すると、徐々にチームに部員が集まるようになった。

入部のきっかけはチームに所属する保護者が知り合いに声を掛けるケースが多く、説得力があるのは“現場の声”と認識。それ以降はいかに選手、そして体験に来た子どもを手を楽しませるかを考えるようになった。「練習が想定内だったら話さないんです。他人に言いたくなるような練習をすることが大事です」。入部してから3か月間で、いかに楽しませられるかが勝負と考えている。

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:川村虎大】

初心者への指導はゴロ捕球とキャッチボールから、大事なのは“成功体験”

では、どのようにして初心者の子どもに野球の楽しさを実感してもらうのだろうか。指導者講習会で、初心者の練習方法についての質問が飛んだ。辻監督が初めて野球をする子どもに教えるのはゴロ捕球とキャッチボール。意外にも、打撃練習はその後だという。

「打撃は難しいんです」。辻監督は成功体験が楽しさにつながると考えている。初心者は打ち損じや空振りする可能性がある打撃より、ゴロ捕球やキャッチボールで成功体験を積み重ねることで野球を好きになるという。キャッチボールにも、子どもを思った指導がある。

「ボールは右か左に『逃げて捕れ』って伝えます」。重力で落ちながら向かってくるボールを、野球未経験の小学生が真正面から捕球することは難しい。左右に逃げて捕ることで落下している軌道を見て捕ることができる。慣れてきて捕れるようになると、次に自ら捕りに行くよう指導する。

少年野球では、よく「ボールから逃げるな」「怖がるな」という指導があるが、大きな間違いだと辻監督は話す。「誰だって怖いに決まっているんですから」。逃げずに捕ろうとして、さらに怖く感じてしまうことが問題だという。一度、感じてしまった恐怖は簡単には克服できないからだ。

野球人口の減少が問題視されている昨今、試合を組めなくなったチーム同士が合併することも多い。辻氏は「厳しい言い方をすると、根本的な解決になっていない」と指摘する。“楽しく、強く”で80人超える大所帯になった多賀少年野球クラブは、選手の笑顔を引き出せるから、人が集まる。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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