ウクライナ侵攻 「第3の被爆地生むな」 長崎、広島 被爆者や若者ら抗議

ウクライナ国旗に使われている黄色と水色のプラカードを掲げ、ロシアの軍事侵攻に抗議する林田さん(手前)や被爆者ら=長崎市松山町、爆心地公園

 被爆地の長崎、広島両市の若者や被爆者らが26日、ウクライナに侵攻して核兵器使用を示唆するロシアに対し、両市内で抗議活動をした。「戦争をやめて」「第3の被爆地を生まないで」。悲惨な被爆体験を語り、受け継いできた市民らは「STOP THE WAR」やウクライナへの連帯を示すプラカードを掲げて黙とうをささげ、同国に平穏が戻ることを願った。
 核兵器廃絶活動に取り組む元高校生平和大使の林田光弘さん(29)=長崎市=が、広島市の同世代の友人らと企画。前夜からツイッターなどで参加を呼び掛け、長崎市の爆心地公園には40人以上が集まった。
 ロシアは核兵器使用をほのめかして威嚇を続けている。長崎会場で林田さんは「第3の被爆地が生まれると(核使用の)連鎖の『種』になる。長崎は祈るだけでなく、核兵器を使うと何が起こるか世界に発信し続けなければ」と訴えた。被爆者の田中安次郎さん(79)は「長崎、広島原爆で亡くなった人への冒瀆(ぼうとく)。子や孫の時代に戦争をさせないため、声を上げ続けるのが被爆者の務め」と語った。
 被ばく医療関連の研究や文化交流のため、20年以上にわたってウクライナを何度も訪問してきた長崎大助教の高橋純平さん(54)は、26日朝に抗議活動の開催を知り急きょ参加。ロシア語が堪能で、長崎の被爆者がウクライナや周辺国の住民に被爆体験を語る際には通訳を務めた。25日にウクライナの友人とビデオ通話をした最中、友人が暮らす街が爆撃を受けた様子だったという。高橋さんは「ウクライナにもロシアにも友人がいる。平和が脅かされ悲しい。長崎でもウクライナを思う人がこれだけ集まったと伝えたい」と語った。
 広島市では約60人が参加。両国に友人がいる英国出身の池田ジャッキーさん(53)は「みんな同じ人間だ。戦争に勝者はいない」と批判。家族と来た重田遥仁ちゃん(6)は「原爆は使わないでほしい」と願った。

ロシアのウクライナ侵攻や、核兵器による威嚇に抗議する原水爆禁止県協議会=長崎市、鉄橋

 原水爆禁止長崎県協議会(県原水協)も、長崎市の鉄橋で抗議活動を実施。集まった市民ら30人余りが「国連憲章を守れ」「核兵器の威嚇を許さない」などとシュプレヒコールを上げた。
 中村法道知事は26日、核使用を示唆するプーチン大統領の発言に対して「原爆の悲惨さや非人道性を訴え続けてきた県民の願いに逆行し、強い憤りを感じる。核兵器が三たび使用されることは、決してあってはならない」と非難するコメントを出した。


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