「攻め」の農業、目指せ「稼ぐ」町 意識改革、商品化で販路拡大 南島原市農林課

今月HP上に開設した市農林課の「みなみしまばらの農業のはなし」

 長崎県南島原市で、市農林課の中堅職員らを中心に「攻め」の農業で「稼ぐ」町を目指す取り組みが進められている。衰退する地方をどう活性化するかは全国共通の課題。人口減少が避けられない中、農産物を「武器」に、市民の生産性を高め地域活性化を図る試みだ。
 今月3日、市の公式ホームページ(HP)に新着情報「みなみしまばらの農業のはなし」が加わった。
 多様な土壌を表現した「耕運機と大地」、環境保全型農業の施策を示した「かかし」、スマート農業を推進する「ドローン」…。黄土色のピクトグラム(視覚的に意味を伝えるシンプルな絵記号)が閲覧者の目を引く。「農業者インタビュー」では、リアルな農業の現場や余暇の過ごし方などプライベートも紹介。農業の魅力を伝えている。
 HP制作担当者の一人、同課職員の荒木智さん(39)は「ネット上で検索しても、南島原の農業に関するまとまった情報がなかった。農業の知名度向上に伴う就農者増や農産物の販路拡大、農業者やふるさとの誇りの醸成に努めたい」と意気込む。
 肥よくな土壌を生かして40品目以上の農産物が生産されている南島原市。農水省の2019年全国市町村別農業産出額によると全国46位。県内シェアは雲仙市(18%)に続く県内2位(16%)を誇る。全国5位のイチゴや同7位のバレイショ、同13位のタマネギなど全国トップ30に計8品目もランクインしている。

特産のジャガイモやレモンを活用した南島原産スイーツ(市提供)

 一方で、少子高齢化に伴い00年に5万7千人だった市の人口は昨年11月時点で4万3500人に減少。老年人口(65歳以上)は4割に達し、生産年齢人口(15~64歳)の減少が地域活力の低下につながっている。市内で農業を営む50代男性は「若者がふるさとに帰りたくても働く場が少ないのが実情。おいしい農作物を生産する自信はあるが、現状に甘え、販路拡大に積極的でなかった。頑張って雇用の場を増やしたい。市の後押しがあると励みになる」と喜ぶ。
 農産物の高付加価値化も進めている。15日には、南島原産のレモンとジャガイモを使った新たなスイーツがそれぞれ誕生。松本政博市長にお披露目された。市が20年度から開催している交流会と商談会での農商工連携で開発された商品。試食した松本市長は「食材の良さを生かしており香りも良くおいしい。地元の食材をふんだんに使った新スイーツを多くの皆さんに味わっていただきたい」と感想を述べた。
 荒木さんは「農業者の意識を変え、商談スキルを上げるとともに、商品化や取引につなげ、最終的に『メイド・イン南島原』の販路拡大を図りたい」と話し、「移住定住施策と新規就農施策は関係性が強いので、両事業がうまく連携することにより、移住定住者数や就農者数が2倍にも3倍にもなり得ると考えている」と期待する。


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