21歳年上パートナーと同居を検討中の49歳契約社員。自分の給与だけで今後の生活は成り立つ?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、49歳、契約社員の女性。21歳年上のパートナーと同居を考えているという相談者。パートナーの資産はあてにせず、自分の給与と蓄えで二人の生活と自身の老後を賄っていきたいといいますが、可能でしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。


49歳、契約社員です。老後資金と年の差パートナーとの同居についての相談です。

若いころから生涯独身のつもりで貯蓄と投資、保険での備えを心掛けてきました。有期雇用での職歴がほとんどですが、厚生年金には加入できており、60歳までは働ける見通しです(無期転換済み)。

現在は世界株と日本株のインデックスファンド数本をメインに積立をしており(貯蓄分からの積立を含む)、このまま金融資産を育てながら生涯賃貸暮らし、それがきびしそうなら定年前後に小ぶりなマンション購入でも考えようという心積もりでした。

が、ここにきて同居を考えようかというパートナーが現れました。20以上の年の差ですが、趣味を通じて出会い安心感を得られる相手ですので、金銭的に成り立つものなら同居したいと考えています。

相手はすでに年金受給中で、その額は約10万円(通知書を確認)。経営してきた会社をたたむ準備に入っており、清算後にはいくばくか手元に残るようですが、さして多額ではないと思われます(まだ金銭面の突っ込んだ話はしていません)。

二人とも住宅の所有欲は高くなく、また現状で一括購入できるほどの余裕もありません。賃貸生活を送るとして、パートナーの資産を期待せず、年金と自身の給与でやっていけるか、また自身の老後が賄えるかの見通しを知りたいです。

家賃はなるべく抑えたいですが、同居なら10〜12万円くらいにはなるかと見込んでいます。また下記の生活費は一人暮らしの自身の数字で、二人になれば、少なくとも水道光熱費や食費は膨らむものと思います。

なお、実家は遠方かつ老朽化しており、フォローの必要なきょうだいがいるため、家を受け継ぐことはなく、むしろ費用がかかるものと考えています。

【相談者プロフィール】

・女性、49歳、契約社員

・同居家族について:同居を検討中のパートナー(70歳、離婚歴あり)。

定期通院の必要な持病(難病指定)はあるものの、日常生活に支障はない。会社経営をしているが、数年前から規模を縮小しており近々正式に会社をたたむ予定(負債はない由)。現在、住民税非課税世帯で年金収入は月額約10万円。事務所兼自宅として月額10万5,000円の物件に居住中。所有していた住宅は家庭を持ったお子さんに譲渡済み。家賃以外の生活費詳細と、その他の金融資産は不明。

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:30万円(パートナーの年金は含まず)

・年間の世帯の手取りボーナス額:160万円

・毎月の世帯の支出の目安:23万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万5,000円

・食費:3万円

・水道光熱費:7,000円

・保険料:3万8,000円(生前給付保険1万3,000円、変額終身9,000円、医療保険5,000円、がん保険2,000円、個人年金9,000円)

・通信費:1万3,000円(携帯2台<1台は実家の親用>、固定、ネット、NHK受信料)

・車両費:2,000円(駐輪場代)

・お小遣い:4万4,000円(日用品費5,000円、趣味娯楽1万円、衣服美容1万5,000円、交際費1万4,000円)

・その他:2万1,000円(交通費1万5,000円、医療6,000円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万円(積立定期)

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,400万円

・現在の投資総額:4,000万円(iDeCo2万3,000円、つみたてNISA3万3,000円、投信積立12万円を継続中)

・現在の負債総額:なし

・老後資金:公的年金加入実績に応じた年金額10万円(ねんきん定期便)。ねんきんネットのかんたん試算では15万円の見込み。

・個人年金:300万円(保険料月払。65歳から30万×10年)+変額年金計700万円(以下、一時払で払済。65歳から60万円×5年、70歳から20万円×10年×2本)

退職金:なし

・終身保険:生前給付500万円、変額500万円(後者は60歳で払込終了後、運用成果を見ながら解約する予定)

・医療保険:日額5,000円(終身)、がん保険:日額1万円(10年定期)

高山:ご相談ありがとうございます。家計を拝見してこれまで堅実に暮らし、将来に対する備えもきちんとしてきたことが伺えます。現在、同居したいパートナーがいらっしゃるとのこと。今後の生活を考える上で、ご自身のお給料とパートナーの方の年金収入で生活ができるのか見通しを知りたいとのことですね。では、同居した時の生活費のイメージや将来かかるお金について見ていきましょう。

2人暮らしの生活費は1人暮らしの時の1.6倍

今後の収入としては、ご相談者さんの現在の月額の手取り収入が30万円、パートナーの方の年金収入が10万円とのことで、合計で40万円となる見込みです。

支出についてですが、1人暮らしから2人暮らしになると、どこの費用がどれだけ増えるかを把握することが大切です。ご相談者さんがこれまで同様の生活水準をキープしつつ同居をするということを前提に考えてみましょう。

参考までに総務省の家計調査報告(2020年版)などのデータを見ていると、1人暮らしから2人暮らしになった場合の支出は、1人暮らしの時の約1.6倍程度となっています。これは、単純に2倍になる項目と住居費や食費など、2人の方が割安になる項目があるからと考えられます。現在の毎月の生活費が23万円ということですから、目安の金額としては、1.6倍した36万8,000円ということになります。

1人暮らしから2人暮らしになった時の生活費を把握する

では、ご相談者さんの状況に合わせてみていくと、パートナーの方の詳細な支出状況がわからないので、明確なことはいえないのですが、ご相談者さんの場合、2人暮らしになった場合に費用が増える項目としては、「住居費」「食費」「水道光熱費」「通信費」といったところが挙げられるでしょう。

仮の試算ですが、
・住居費:現在7万5,000円→同居後12万円
・食費:現在3万円→同居後6万円
・水道光熱費:現在7,000円→同居後1万4,000円
・通信費:現在1万3,000円→同居後1万6,000円(格安スマホを使用するとして3,000円上乗せ)

上記の項目に加えてパートナーの方のお小遣い、保険料、医療費などを考える必要がありますが、ざっくりとした試算上は、想定している収入から2人分の生活費は捻出できそうですね。

パートナーが介護になった時のことも考えておく

ご相談者さんの収入が極端に下がったり、健康問題などが発生したりしなければ特に問題はないと思いますが、問題が起こるとすれば、パートナーの方が病気や介護になった時です。特に高齢化が進んでいる今、介護状態になる確率は、80歳以上では、約9割以上となっています。

もし、パートナーの方が介護状態となった場合、基本的に介護費用についてはパートナーの方の年金や資産から賄うことになると思いますが、資産がほとんどないなどのケースでは、ご相談者さんが介護費用を負担することも考えておく必要があります。

では、実際、介護になった場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

在宅介護にかかる費用は、訪問介護やデイサービス、福祉用具などの介護保険サービスの利用にかかる費用と、医療費やおむつ代などの介護サービス以外の費用があります。利用者の要介護度や介護期間によって費用は違ってきますが、目安になる費用をみてみましょう。

公益財団法人生命保険文化センター2021年「全国生命保険実態調査」によると、在宅の場合、住宅改修や介護用ベッドの購入などにかかった一時費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、平均74万円、月々の費用(自己負担分)は、平均8万3,000円、介護期間は、平均61.1カ月となっています。

単純に計算すると、在宅介護にかかる費用の総額は、平均で約588万円となります。介護の期間が延びれば延びるほど負担は増えていくので、介護の費用をどうするのかについてはきちんと確認しておくことが大切です。

おひとりさまの老後はいくらかかる?

また、パートナーの方との年の差を考えると、その後、ご相談者さんがお1人で暮らす期間が長いので、ご相談者さんの老後の費用についてもしっかり考えておく必要がありますね。

では、老後はどれくらいの資金を準備しておいたら良いのでしょうか?

ご相談者さんの今後のキャリアプランにもよりますが、ひとまず、60歳までは働ける見込みとのこと仮に60歳で仕事を辞めた場合には、年金が支給される65歳までの5年間は無年金になります。11年後のことなのでどうなっているかわかりませんが、ここでは、計算を単純にするために、60歳時点でシングルの生活を送るとして試算してみます。

無年金の期間の生活費は、現役時代の7掛けとして毎月16万円(23万円×0.7)と仮定します。そうすると、16万円×12カ月×5年間=960万円となります。

次に65歳以降の生活費ですが、生活費を試算するにあたり、現在の高齢者の方たちのデータが参考になります。総務省の家計調査報告(2019年)によると、現在の高齢無職世帯(正社員で働いてきた人)が受給している年金額はシングル世帯で約12万4,000円。この収入に対して、支出はどうなっているかというと、シングル世帯では、15万2,000円となっており、毎月約2万7,000円の赤字がでているという結果に。

ただし、上記の生活費は、衣食住の基本生活、かつ持ち家を前提とした金額です。住居費用を見ると、全体の支出の9.2%となっており、金額にすると約1万4,000円です。ですから、ずっと賃貸暮らしということになれば、住居費はもっとかかるとして試算する必要があります。

相談者の貯蓄で賄える?

ご相談者さんのねんきんネットの試算によると、月額15万円程度の年金収入が見込めるとのこと。60歳以降の生活費も16万円で試算していますし、これまでの生活の状況から見ても、ご相談者さんの場合、基本生活費は年金収入で賄えそうですね。

では、住居費用の上乗せ分ですが、仮に月額7万円として試算してみましょう。65歳から年金を受給し、90歳まで生きるとすると、7万円×12カ月×25年間=2,100万円となります。

もし、80歳を過ぎたあたりから老人ホームに入居するということになると、入居する老人ホームのグレードにもよりますが、80〜90歳までは月額15万円程度かかるものとして試算してみましょう。とすると、住居費用は3,000万円程度になります。この金額に加えて、上記でお伝えした、無年金期間の生活費、介護費用や医療費についても考えておきましょう。

現時点で貯蓄額が1,400万円、投資総額4,000万円あり、これらに加えて、個人年金保険、変額年金でもきちんと備えていらっしゃいます。ボーナスからも毎年100万円貯蓄し、つみたてNISA、iDeCo、投資信託積立などもしていらっしゃるので、パートナーの方と同居後も、現在の貯蓄ペースを継続できれば、老後も基本的な生活は問題なく送れるでしょう。これまで堅実に生活をしてきて、資産形成にも励んできたことが功を奏しているのではないでしょうか。

2人暮らしがうまくいくかのポイントは不測の事態への備え

ポイントは、パートナーの方が病気や介護になった時の費用負担と言えそうです。また、将来的にどうするのかはお2人が決めることですが、籍を入れずに同居するといった場合には、もし、どちらかが病気になって手術が必要になった時に家族として同意書にサインができないケースがあったり、どちらかがお亡くなりになった場合には相続権が発生しなかったりといったことがあります。不測の事態が起こった時の対処法についても話し合っておくといいですね。

年齢を重ねて、素敵なパートナーと出会えたことは本当に素晴らしいことだと思います。将来の見通しをしっかり立てて、充実した時間をお2人で過ごしてくださいね。

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