神奈川県内では絶滅したはずの小さな水生昆虫「カミヤコガシラミズムシ」が横須賀市の観音崎自然博物館で再発見された。県内では絶滅したり、絶滅寸前となった昆虫が対岸の千葉から台風で飛ばされ、海を渡っているとみられるという。採集には学芸員の佐野真吾さん(34)と、2人の中学生が協力。同館周辺で見つけた希少なトンボやミズムシなど9種を千葉県内でも確認できたことで、飛来の可能性が高まった。
カミヤコガシラミズムシは体長3ミリほど。県のレッドデータブックで絶滅種に分類されている。
佐野さんは2019年10月、同館のビオトープで1匹を再発見した。「昔から千葉から飛んできたのではないか、という話はあったが裏付けた人はいなかった」と話す。同館のジュニア生物調査隊員で現在いずれも市立浦賀中1年の亀岡讓さん(13)と矢口孝太郎さん(13)に声を掛け、20年春から研究を開始した。
2人は毎月のように、同館周辺を巡り、網で昆虫を採集した。「台風の後は目に見えて昆虫が増えていた。前日にトンボが1匹もいなかったのが、台風の翌日は15匹もいたこともあった」ことから、佐野さんは台風説を確信した。
集まった昆虫を佐野さんが分類。絶滅種のカミヤコガシラミズムシのほか、トンボの一種で絶滅危惧1A類のネアカヨシヤンマ、準絶滅危惧種のカトリヤンマなど希少な9種も含まれていた。
3人は確認のために千葉県富津市に向かい、これら9種類を採集。形や模様などが同じだったため、仮説を裏付けることができた。
2人の中学生は「珍しい虫だったと確認できて、すごくうれしかった」と振り返る。
研究成果は3人の連名で論文として発表。今後、同館で展示する。佐野さんは「ビオトープで育てることで、希少な昆虫を復活させたい」と意気込んでいる。