株式市場の注目はすでに「ウクライナ後」へ?株価の見通しを解説

ロシア軍のウクライナへの攻撃開始が伝わった2月24日の東京市場では日経平均が大幅安となり、心理的な節目の2万6,000円をあっさり下回りました。海外時間になると本格的な侵攻のニュースが伝わり、NY市場ではダウ平均が朝方に859ドル安となる場面がありました。こうした動きを目にして、この先のマーケットはどこまで下落するのだろうと不安になった方も多かったのではないでしょうか。

<写真:AFP/アフロ>


「噂で買って、事実で売る」

しかし、その後の米国の株式相場は、これぞマーケット、という反応を示しました。朝方の大幅安を埋め戻してダウ平均は小幅に上昇して終えました。ナスダック総合は大幅高となりました。結局、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった日のアメリカの株式市場ではダウ、NASDAQ、S&P500の主要3指数はそろって上昇したのです。

これは典型的なBuy on rumor, sell on fact(噂で買って、事実で売る)の逆のパターンです。ロシアのウクライナ侵攻の可能性を巡っては市場でさんざん議論されてきました。その点に関しての不透明感が相場の重石になっていましたが、いざ侵攻が現実のものとなってしまえば、もう「不透明」ではありません。マーケットは「わからないこと」をリスクと捉えるので、わかってしまえば、それはもはやリスクではなく、次のシナリオを読みにいくのです。

その米国株の反応を受けた翌日、先週金曜日の日本株は大幅反発となりました。さらにNY市場は続伸し、ダウ平均は800ドル以上値上がりし今年最大の上げ幅を記録しました。今回も「銃声が鳴ったら買え」という市場格言通りの相場展開となりました。

ただその後、週末の間に停戦交渉が棚上げになったり、欧米がロシアの金融機関をSWIFTから排除するという厳しい制裁を決定したりと、再びロシア・ウクライナを巡る情勢は不透明となりました。週明けの日経平均も反落して始まりました。では、また下値を探る動きとなるのでしょうか。予断は許しませんが、その可能性は低いと思います。

なぜなら、ウクライナ問題は国際政治や地政学上の問題として残り続けますが、しかし、少なくともマーケットの材料としては、ほぼ終息だと思われるからです。なぜならロシア軍がウクライナの首都であるキエフを包囲するというところまで事態が一気に進んだからです。欧米の制裁もSWIFT排除という厳しいものが決まりました。想定される「最悪」の状況にほぼ達したため、これ以上悪くなりようがないからです。

今後の見通し、市場の注目点は?

今回のロシアによるウクライナ侵攻、欧米の経済制裁などで懸念されるのがエネルギー価格や農産物等のコモディティ価格の上昇です。しかし、ロシアの軍事侵攻が開始された24日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物は3日続伸しましたが、WTIは前日比0.71ドル(0.8%)高の1バレル92.81ドルで取引を終えました。朝の時間外取引で一時、1バレル100.54ドルと、2014年7月以来となる100ドル台に乗せた後は伸び悩みました。商品市況でも株式相場同様に、いったんはSell on Fact - 事実で売りとなったのでしょう。

ロシアへの経済制裁強化を受け、週明け28日の原油相場は大幅高で始まりました。国際指標であるロンドン市場の北海ブレント先物は、日本時間朝の取引開始直後に1バレル105ドル台まで上昇しました。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物も一時7ドル強上げて1バレル99ドル台に乗せる場面がありました。しかし、先週、ロシアが攻撃を開始した直後につけた高値は抜いていません。これも前述の通り、最悪の状況に達したことを織り込んだからでしょう。先物相場が織り込めるのはここまでと思われます。今後の動きは、さらに時間が経過してから明らかになるロシア産原油の供給状況次第だと思われます。

よってロシア・ウクライナ問題も相場の材料となるのはそろそろ終わりで、今後は再びFRB(連邦準備理事会)の金融政策に目が向くでしょう。FRBの利上げに対する市場の織り込みもかなり修正されて、一時出ていた3月に0.50%の利上げ観測は後退し、FF金利先物が織り込む利上げ幅は0.25%、年内6回で年末に1.5%という穏当なものに戻っています。実際に3月に利上げが始まれば、こちらも材料出尽くし、Buy on rumor, sell on fact(噂で買って、事実で売る)の逆のパターンとなって、株式市場は堅調さを取り戻すと思われます。

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