<心新たに 2022年春・4>バドミントン 田中市之介(瓊浦高→法大) 仲間に恵まれ成長 常に真剣勝負で

「U19日本代表に選ばれてさらに上を目指そうと思えた」と語る田中=長崎市、瓊浦高

 中学時代、全国で勝てなかった小柄な少年が高校で大きく飛躍した。
 昨年3月、全国高校選抜大会個人シングルス。身長158センチの田中市之介は、抜群のスピードを武器に旋風を巻き起こした。粘り強くシャトルを拾い、鋭いスマッシュを連発。準々決勝でU19日本代表の第1シードを倒すと、決勝も同代表選手と1-2の熱戦を演じた。「相手の球がよく見えてゾーンみたいな感じ」。大舞台で殻を破り、異例の追加招集でU19日本代表に入った。
 コート内を縦横無尽に動き回る体力は「林貴昭先生のノック練習」で養った。ジャンプスマッシュとプッシュの反復練習。試合をイメージして、毎回全力を尽くした。入学当初「同級生で4番手」だった実力は、2年時の県新人大会で優勝するまで伸びた。この自信を胸に一気に全国2位までに駆け上った。
 姉2人がバドミントンをしていた影響で、6歳から本格的にラケットを握った。地元の中学に部活動がなかったため、福岡県トップレベルの強豪校へ進学。高校も福岡の予定だったが、恩師から「1回でいいから瓊浦の練習に参加してこい」と勧められて長崎へ。そこで一番きついトレーニング中、先輩たちが声を掛けて励ましてくれた。「苦しくても楽しく頑張れた」。この雰囲気に引かれて進路を変えた。

昨夏のインターハイで団体3位、個人シングルス8強入りした田中=富山県高岡市、竹平記念体育館

 選択は間違っていなかった。常に真剣勝負で腕を磨けた。「みんな勝ち負けのこだわりが強くて。一日一日の練習の質が高かった」
 寮での共同生活も成長を促した。土日の練習を終えて戻ると、いつの間にか、1人、また1人と自主練習に出掛けていた。「自分もやらなければという気になる。チームメートに恵まれた」。相乗効果で強くなった。
 そんな仲間たちとつかんだ団体の銅メダルが、印象に残っている。昨夏のインターハイ。先輩たちが3大会連続(2020年はコロナ禍で中止)で阻まれていた準々決勝の壁を越えた。「無観客で声を出しちゃいけない中、拍手が聞こえて楽しくできた」
 卒業後は大学バドミントン界の強豪、法大へ進む。体格も技術もレベルが上がるが「1年目からインカレ出場を目指して努力を続ける」。瓊浦の3年間で教わった「常に真剣勝負」を忘れずに。


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