中上貴晶がメンタル、フィジカル両面を向上させて挑む、2022年シーズン/MotoGP第1戦カタールGP

 MotoGPに参戦する中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は今季、最高峰クラス参戦5年目を迎えている。中上は今季を戦うため、いくつかの新しいものごとに取り組んだ。メンタルとフィジカル、その両方をさらに磨き上げているのだ。

 2021年シーズンを終えたあと、中上は2022年シーズンに向けて大きくはメンタルとフィジカル、双方の面からそれぞれにこれまでとは違う、新しい取り組みを始めた。メンタル面の強化といえば、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が心理学者とともに取り組んでいたのが記憶に新しい。クアルタラロは感情をコントロールし、成績を安定させ、2021年のチャンピオンを獲得したのだった。

 これまで、中上としてはそうしたメンタルコーチについて静観していた部分もあったと言う。ただ、昨年の特にシーズン終盤の苦境を振り返り、そして今季を見据えて下した決断のひとつが、メンタルコーチの採用だった。

「毎日ではありませんが、例えばテスト前後、それから今週末に入る前にもメンタルコーチと話をしました。残念ながらコーチはレースには来られないのですが、電話で話したり直接会って話をしたりして、自分の心をリフレッシュして、バイクに乗る前にメンタルの状態をケアしています」

「テスト中もすっきりした状態にありました。とても集中していたし、いい状態でした。なので、そういう状態を維持したいと思います。もし何か不都合があればやり方を変えるかもしれませんが、今はとてもうまくいっています」

 順調に進んでいるメンタル面のさらなる向上とともに、中上はフィジカル面でもこれまでとは異なる取り組みを始めた。2021年シーズンを終えて日本にいた時期から、トレーニングに新しいアプローチを加えたのだ。体の使い方や筋肉の構造を学び、必要なときに必要な筋肉を使うことで、無駄をそぎ落とし、己が持つ最大のポテンシャルを発揮する方法を学んだという。

 その効果について、2月に実施されたマレーシアのセパン、インドネシアのマンダリカで実施された合計5日間のテストでどうだったのかと尋ねると、「体の状態はとてもとてもよかったですね。とても高いレベルにありました。(テストで)かなりたくさん走ったのに、力がなくなったり、疲れすぎたりすることもありませんでした。常に、走り始めのような状態でいられたんです」と効果を実感したようだ。

「このオフシーズンで、メンタルもフィジカルも向上させるために、僕は多くのことを変えました。昨シーズンよりも、そのレベルは上がっていると感じています。今週末、それから今季に向けていいフィーリングしかないように感じています」

 そして、こうも付け加える。「ただ、今週末にうまく適応することが一番大事です。(金曜日の)フリー走行1回目が待ちきれないんですよ」

 また、中上が駆るホンダRC213Vも今季はこれまでと全くコンセプトの異なるバイクに進化している。開幕戦カタールGPに向け、中上は「セパンとマンダリカの5日間でバイクを走らせ、新しいバイクに順応し、理解しなければなりませんでしたが、最終的にマンダリカでこの新しいバイクについてわかり始めました。今季のバイクには間違いなく、ポテンシャルがあります。今はただ、開幕戦から結果を求めています。最初からクレバーに、強くありたいと思います。そして、今週の日曜日は素晴らしい結果を手にしたいですね」と意気込んだ。

 メンタル、フィジカル両面から己を向上させて挑む中上のMotoGPクラス5年目のシーズンが、カタールGPで幕を開ける。

© 株式会社三栄