【F1バルセロナテスト後会見】初走行を終え、アルファタウリ代表はAT03に高評価「選手権5位以上を狙いたい」

 アルファタウリは開幕前バルセロナテストで新車AT03を走らせ、初日は角田裕毅が121周、2日目はピエール・ガスリーが147周を走破し、さらにガスリーは総合2番手の速さを見せた。

 リモート取材に応じたフランツ・トスト代表は、「まだテストは始まったばかり」としながらも、「60%風洞での新車開発は順調だったし、ベースとしては非常によくできたクルマだ」と評価。「今季は十分にコンストラクターズ選手権5位前後の位置を、いや5位以上を狙えると思っている」と、ぶち上げた。

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──テスト3日間を終えて、全般的な印象は?

フランツ・トスト代表(以下、トスト):新車AT03は、基本的には非常によくできたクルマだと思っている。パフォーマンス、信頼性の両面でね。実際、今回が初めての実走テストだったにもかかわらず、初日から多くの周回をこなすことができた。ふたりのドライバーからも、好意的な反応をもらっている。もちろん、まだテストは始まったばかりだけどね。

 唯一危惧しているのは温度だ。路面温度が13度しかなくて、開幕戦のバーレーンは言うまでもなく、スペインGPの週末の気温、路面温度からもかけ離れた寒さだった。より高温のコンディションでも、今回のようなパフォーマンスと高い信頼性が発揮できるかどうか。そこに100%確信が持てない。タイヤの持ちも、よくわからなかった。だから冬のバルセロナでテストをするのは、好きじゃないんだ(苦笑)。

──シミュレーションと実走テストでの結果は、かなり高いレベルで合致していますか?

トスト:ほぼ予想した通りだね。かなり大量のデータを取得できて、その分析はこれからの作業になるけど、今のところはCFDや風洞の結果と大きな隔たりはない印象だ。

2022年F1バルセロナテスト2日目 角田裕毅(アルファタウリ)

──より大きなスケールの風洞を使えるようになったことも、好結果に貢献していますか?

トスト:その通りだ。これまで50%風洞しか使えなかったのが、去年から60%にスケールアップした。その違いはかなり大きい。1年以上使い続けたことで、新風洞への理解も進んだ。その意味でも今年の新車開発は、非常に順調だった。

──マシンのポーパシング(縦揺れ現象)は、アルファタウリも問題になってますか。

トスト:テストの最初は、かなり大変だった。あそこまでのポーパシングは想定外だったからね。とはいえすでに空力エンジニアたちが対策を考えてるから、次のテストで対応できるはずだ。

2022年F1バルセロナテスト2日目 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)

■テストでの角田は「速さと安定性を兼ね備え、フィードバックも申し分なかった」

──ライバルたちの走りを見た現時点での、今季の目標を聞かせてください。

トスト:難しい質問だね。まだ新車で走り始めたばかりで、どのチームも自分たちのクルマの理解に集中して、他がどうなのかまでは意識がいってないだろう。我々は幸い、信頼性に関してはまったく問題はない。相対的なパフォーマンスがどれくらいのレベルなのかは、今後のテストを待った方がよさそうだ。

 とはいえさっきも言ったように、クルマのベースは非常によくできている。なので去年以上にいいシーズンになることを期待しているよ。開発の方向性が間違っていないことは、ほぼ確認できた。ドライバーふたりのラインナップも素晴らしい。ピエール・ガスリーは速いだけでなく勝ち方も知るドライバーに成長した。角田裕毅は2年目を迎えて、経験という武器を身につけた。テスト初日の角田の走りには、非常に感銘を受けたね。速さと安定性を兼ね備えて、ノーミスで走り切り、技術フィードバックも申し分なかった。エンジニア、メカニックたちも含め、チーム全体の底上げもされている。今季は十分に、コンストラクターズ選手権5位前後の位置を狙えると思っているよ。いや、5位以上の結果を出したいね。

2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)

──角田はF1の肉体的過酷さを過小評価していたと、去年終盤に語っていました。オフの間にトレーニングを重ねて、万全の体調にテストに臨んでいましたか。

トスト:F1マシンのキツさを過小評価するのは、ユウキに限らない。これまでもほぼすべてのルーキーが、多かれ少なかれその問題に直面してきた。下位カテゴリーで走ってきた、どんなマシンとも違う。自信満々でF1にやって来て、ブレーキングやコーナリング中の体力的なあまりのキツさに、その鼻をへし折られるわけさ。10数年前に比べると、今の新人たちはテストの機会もずいぶん少ない。そこは同情すべき点だね。

 ユウキもずいぶん苦労していたが、シーズン中盤から正しい方向に軌道修正していった。とはいえ今季のマシンは、去年までよりさらに過酷になっているはずだ。すでに高速コーナーの速さは凄いことになっているし、乗り心地もかなり硬い。シーズンが進むにつれ、さらに速さは増していくだろうしね。ユウキもそこは十分理解して、オフシーズンのトレーニングはいつも以上にしっかりこなしていた。なので、まったく心配していないよ。

──テストでの走行を見る限り、ポーパシングの問題を除けば、ドライバーはそれほど新車の運転に苦労してないように見えます。むしろ去年までより、運転は楽なのでは?

トスト:いや、そうは思わない。というか、まだ新車に関してはわからないことが多すぎる。次のバーレーンテストまで、答えは待った方がよさそうだね。一方で、彼らがスムーズに走っているように見えるのは、今のF1ドライバーの運転技術が非常に高いレベルにあるからとも言える。実際のところ、今の20人のドライバーたちは、最高に運転がうまい連中の集まりだよ。そこはかつてのF1とは、まったく違う点だ。

2022年F1バルセロナテスト3日目 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)

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