住宅ローンは変動金利と固定金利どちらが良い?住宅ローンを組む際の注意点を解説

現在、国内の住宅価格はバブル期にならぶ高値圏で推移しています。超低金利政策から住宅ローンが組みやすいことや、コロナ禍で住宅需要が増えたこと、さらにはウッドショックと言われる木材の不足や、輸出入の輸送の非効率化などによる複合的な要因によるものと言われています。

一方、2022年2月には、10年固定型の基準金利は2016年以来の水準まであがりました。世界的に物価高騰や金利上昇傾向にある中で、これから住宅購入を検討する場合にはどのようなポイントを押さえていくべきかを考えます。

※記事中に住宅ローン金利は2022年2月末日時点、各行のHP等で確認出来る公表値を掲載しています。


上がっている住宅価格

2021年10月に不動産価格やデータベース情報を発信している東京カンテイが発表した2020年の新築マンション「年収倍率(物件平均価格が平均年収の何倍か)」は、70平方メートル換算のマンションで全国平均8.41倍、東京都では13.4倍と極めて高い水準になりました。

一般的に住宅ローンを組む際の年収倍率の目安は「5倍程度」と言われているので、東京はその倍以上の水準です。この金額でも住宅が売れる背景には、夫婦共働きによるペアローンでの購入や、低金利政策が続き住宅ローンが借りやすいことが挙げられます。

住宅ローン金利にも変化の兆し

一方で住宅ローン金利にも変化が見え始めました。2022年2月、メガバンク3行はそろって10年固定型の基準金利を引き上げました。三菱UFJ銀行は3.49%(0.1%上昇)、三井住友銀行3.5%(0.1%上昇)、みずほ銀行2.8%(0.05%上昇)となり、2015年〜2016年水準まで上がっていることになります。

実際に顧客に貸し出す金利は優遇金利分を割引いた実質金利のため、今回引き上げられた基準金利より安いものになります。例えば、三菱UFJ銀行は3.49%から優遇幅として最大2.65%を引いた0.84%です。とはいえ、一般的に短期プライムレートに連動する変動金利よりも先に、10年長期国債の金利に連動する10年固定金利が上がると言われており、いずれ変動金利にも影響が出てくる可能性があります。

変動金利はどうやって決まる?

その変動金利は、今のところ過去最低ラインをキープしています。
2022年の最安金利をみると、

・みずほ銀行ネット住宅ローン0.375%
・PayPay銀行 0.380%
・auじぶん銀行 0.389%
・SBIマネープラザ 0.39%
と0.3%台後半が中心です。
※auじぶん銀行は0.289%のキャンペーンも行っていますがauモバイルの利用など付帯条件が厳しくなっています。

変動金利は毎月変動するわけではなく、半年に一回金利が見直されます。一般的に変動金利は「短期プライムレート」という銀行が業績好調な得意先企業向けに最優遇で貸し出す短期金利に連動しています。この短期プライムレートは各行が独自に決めるものですが、これまでは大半の銀行が日銀の政策金利に連動させていたため、何年も変化がありませんでした。しかし、このような金利変動局面では、銀行独自の判断で急上昇させることも可能なため、注意が必要です。

世界の金利に目をむけると、コロナ禍で多量にお金を剃った各国ではインフレ傾向となり、金利も上昇しはじめています。お金は金利の低い国から高い国へと流れる傾向にあるので、このまま円安がすすむと、輸入品の値段があがります。さらに国際紛争などでエネルギー(石油、天然ガス等)価格が上がれば、加工や輸送の費用があがり日本国内でもインフレが加速していく可能性もあります。

住宅ローン金利が上がると住宅購入を控える人が増えるため、需給の関係から平均住宅価格は下がる傾向にあります。また、変動金利で借りた場合に、金利が上昇すると毎月の返済金額が増え、住宅価格が市場全体で低下していた場合、売却価格が住宅ローンの残債を下回る可能性もあります。

変動金利の5年ルールと1.25倍ルール

では、変動金利で住宅ローンを借り、金利が上昇し変動金利が半年ごとに上がった場合はどうになるのでしょうか。住宅ローン金利が変更された場合、すぐさま毎月の返済額が増えるわけではありません。月々の返済額は変わらず、その内訳が変わるのです。

住宅ローンの返済は、借り入れ金額の元金返済と、利息分の返済が合わさった金額です。住宅ローンの変動金利が上昇すると、利息の返済額が大きくなり元金の返済が少なくなります。

返済額自体が変わるのは、通常5年に1回です。また、返済額の増加も1.25倍を上限と決められていることが一般的です。とはいえ、それ以上に金利が増えれば、最終的に住宅ローンの返済期間を過ぎても残債が残ってしまう場合があるので注意が必要です。
この5年ルールや1.25倍ルールを明記していない金融機関もあるので、住宅ローンを借りる前に確認をした方が良いでしょう。

変動金利か固定金利か

変動金利は借り手が今後の金利上昇リスクを負い、固定金利は貸し手である金融機関が住宅ローンの金利上昇リスクを負います。貸し手である金融機関は、将来の金利上昇リスクを加味しながら住宅ローンの金利や手数料を決めているので、基本的には損をしないラインを設定しています。固定金利は、結果的に変動金利より高くつくことが多いでしょう。

金利上昇幅が5年で0.5%ずつ伸びて、20年後に2.5%に上昇するようなケースであれば、固定金利で借りていた方が返済金額は小さくなります。ただしこの場合も、固定金利で借りた毎月返済額と、変動金利で借りた毎月の返済額の差を貯めておき、5年に一回繰り上げ返済すれば変動金利で借りた方が総支払額を少なくできます。変動金利で借りる場合は、固定金利で借りた場合の返済額との差分を貯蓄にまわして、金利上昇リスクに備えると良いでしょう。また、固定金利がいけない訳ではありません。変動金利で借りた結果、返済額の変動が不安で、将来悩むことが精神衛生的によくない場合は固定金利で借りるのも手だと思います。

ただ、10年固定金利は注意が必要です。10年固定金利は、35年固定金利に比べて金利が低く、10年間金利が変動しないので安心感もあります。ただし10年間が過ぎたあとは、変動金利を選択するか固定金利を借りるかを選べますが、優遇金利が著しく少なくなります。

例えば、三菱UFJ銀行の10年固定金利の場合、3.49%の店頭表示金利から、初回の借入時は金利優遇で-2.650%ひかれるので実質金利は0.84%ですが、10年後からの優遇幅が小さくなり-1.5%しか引かれません。つまり、10年後にまた10年固定金利を借りた場合、仮に店頭表示金利が変わらなかったとしても固定金利は1.99%で、変動金利は0.975%と、非常に高くなってしまいます。10年固定金利を選ぶ場合は上記のことを理解した上で、10年で返済を終えられるが金利変動の影響は受けたくないという方向けのローンと言えます。

金利以外も、住宅ローンを借りる前に確認したい重要ポイント

住宅購入は人生のゴールではなく手段です。想定外の金利や収入の変化、子育てや介護、離婚などライフプランの変化、地域との関係や諸事情などで当初思い描いていた生活ではいられなくなることがあります。住宅に縛られて思ったような生活ができなくならないようにするためには、住宅の売却をいつでもできる状態にすることが大切です。

そのためには、定期的に住宅売却価格の査定をだして、住宅ローンの残債に対して売却価格がすくなくなってしまっていないかを調査しましょう。もし、オーバーローン(売却価格がローン残債を下回る状態)であれば、その差分を埋められるだけの資産が必要になります。

また、住宅購入は一生に内に何度も行うものでは無いので「慣れている」人が少ないのが現状です。今回紹介した内容以外にも、金融機関の手数料や保証金、住宅ローン控除の制度改正、こども未来住宅支援事業などによる援助など、「知っているか知らないか」で数百万円の差が出てしまいます。

住宅ローンを組む場合は、自らがよく勉強し、公平な立場の専門家とライフプランをしっかりと立てて検討するようにしましょう。

© 株式会社マネーフォワード