<南風>息子からのギフト

 先日、息子の学校で「十三祝い」のセレモニーが開かれた。支援学校に通う息子が、今日まで元気に健康で成長できたことに、親として胸がいっぱいだった。

 12年前、息子を妊娠中に異常が見つかり、出生前診断でダウン症であることが分かった。これまで、障がいを持った当事者の姉妹として育ち、今度は障がいを持つ子どもの親となることにどんな意味があるのだろうかと悲しみに泣いた。出産に対し、周りからの反対がなかった訳ではない。そんな中、母から「大丈夫、何とかなる」と言われ、子どもと共に自分の使命を見つけていこうと腹をくくった。

 息子は小さく生まれ、2回の外科手術を受けたが、大きな病気をすることなく、元気に成長している。発達はゆっくりで、当該年齢の子どもの約半分だが、確実に伸びている。

 障がいのある子どもの親になった時、これまで培ってきた常識は全く役に立たなくなった。息子の成長とともに、親として障がい受容を繰り返し、これまでの「普通」「常識」からほど遠い、新しい価値観を作り上げる、人生の再構築がスタートした。

 息子の子育ては、自分の中にある「普通」と言う鎖が解け、新しい世界、価値観を広げていく作業。娘を育てていた頃には、気付くことのなかった、小さな喜びや驚きが、私の感性を豊かにしてくれる。

 子育てにはさまざまな悩みがある。だが、大抵の悩みは親である私の「普通」という呪縛から生まれる。その呪縛から解放された時、いろいろな悩みが一気に減った。それは、社員教育や社会活動でも生かされ、多角的に物事を見る視点にもつながる。「子どもは」ではなく「この子は」という視点で見ることができるようになったことは、私が障がいを持つ息子の親になった一番のギフトだと感じる。

(比嘉佳代、おきなわedu代表取締役)

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