「バッチコイ」は意味がないから廃止 選抜V&元ドラ1の“悪しき風習”を取っ払う指導法

元日本ハムで、現在は「安倉里ノ坊キングス」のコーチを務めている尾崎匡哉さん【写真:本人提供】

2002年のドラフト1位で日本ハムに入団し12年間プレーした尾崎匡哉さん

野球を始めたばかりの小学生に本当に必要な指導とは何なのか。2002年の選抜で優勝を果たし、同年のドラフト1位で日本ハムに入団して12年間プレーした尾崎匡哉さん。現在は地元の兵庫県に戻り、仕事の傍ら少年軟式野球「安倉里ノ坊キングス」のコーチを務めている。

「子どもたち、特に小学生を教えるのは一番難しい。細かな技術論よりも思い切りスイングしたり野球の楽しさを知ってもらえるように心掛けています」

意味のない声かけも廃止した。試合や練習で子どもたちが口にする“バッチコイ”。打者に向かって「打ってこい」との意味があり、少年野球ではお馴染みのフレーズだ。尾崎さん自身も少年時代は「監督やコーチに元気を出せと言われて、何となく口にしていた」というが「もっと実のある声かけが必要」と“悪しき風習”を取っ払うことを始めた。

内野手は遊撃手、外野手は中堅手など、ポジションごとにリーダーを決め、ベースカバーや送球間に入る選手の確認など、状況に応じた声かけを行っている。子どもたちが困った時にはアドバイスを送るが「まずは自分たちで考える。試合をやるのは選手ですし、いかに自分を信じることができるかが大事」と口にする。

1死三塁でエンドラン、ベンチで満足そうな指導者を見て違和感

少年野球にいまだ存在する“勝利至上主義”にも違和感を覚えている。こんなケースがあった。ある試合で1死三塁の場面で相手チームの作戦はエンドラン。勝ち越しに成功したベンチの指導者は、満足そうな顔を浮かべていたという。

「確実に1点は入るが、子どもたちにとって本当に必要なのかと。一番成長する時期には思いっきりスイングすることが大事なんじゃないか。たとえ点が入らなくても、それで本人が考える事にもつながる」

もちろん、試合で勝利を目指すことは必要。だが、小学生の時から小さくまとまることだけは避けたい。中学、高校とカテゴリーが上がるにつれ勝敗は求められるが、まずは野球を続けるための“土台作り”を大切にしていく。

理想と現実のギャップに戸惑い、小学生で野球を辞める子どもたちは多い。「公園で楽しくやっていた野球がどんどん嫌いになる理由はそんなところにあるんじゃないかなと。やらされる野球が一番成長を止める。自分の成長を楽しみなさいと子どもたちには伝えています」。野球を始めた原点を忘れない指導を心掛け、子どもたちと向き合っていく。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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