業種間で明暗、居酒屋は12月から増勢が続く【2021年度(4-2月)「飲食業の倒産動向」調査】

 2021年度(4-2月)「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は、556件(前年同期比22.0%減)で前年同期を大幅に下回った。「新型コロナ」関連倒産は271件で、飲食業倒産の48.7%とほぼ半数を占めた。コロナ禍での相次ぐ緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の適用で、営業時間の短縮や在宅勤務などにより来店客数の減少は続いているが、営業補償や支援金等が倒産抑制の効果をみせている。
 3月6日に解除予定だった「まん延防止等重点措置」は、首都圏など18都道府県で2週間の延長が決定した。2021年10月以降、緊急事態宣言などの解除で営業制限が緩和され、飲食店は久しぶりに通常営業に戻った。しかし、変異株「オミクロン株」の感染者数が急増し、2022年1月9日から沖縄、広島、山口に「まん延防止等重点措置」が適用され、その後、対象地域が拡大された。
 業種別では、最多が「専門料理店」の137件(構成比24.6%)。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」の136件(同24.4%)。コロナ禍の営業制限や生活様式の変化は、売上に深刻な影響を及ぼし、居酒屋は2021年11月以降、3カ月連続で前年同月を上回っている。一方、コロナ禍での“巣ごもり需要”“宅飲み”などで「宅配飲食サービス業」は16件(前年同期比51.5%減)と半減、年度でも2010年度(10件)以来、11年ぶりに10件台にとどまる可能性が出てきた。
 長引くコロナ禍で感染拡大前の生活様式は大きく変化した。アフターコロナに向け、事業者の実情に則した事業再構築や廃業への支援が求められる。

* ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年(4-2月)の倒産を集計、分析した。

飲食業倒産、年度末に向けて増加の兆し

 2021年度(4-2月)の「飲食業」倒産は556件(前年同期比22.0%減)で、年度(4-3月)では2004年度(529件)以来、17年ぶりに600件を下回る可能性が高い。
 飲食業倒産は、新型コロナ感染拡大で最初の緊急事態宣言が発令された後の2020年4月80件(前年同月比29.0%増)、6月98件(同48.4%増)、7月93件(同27.3%増)、8月72件(同18.0%増)と急増した。だが、9月以降はコロナ関連の資金繰り支援が事業者に行き渡り、飲食業の倒産は前年同月を下回る状況が続いた。
 しかし、コロナ禍の長期化や支援効果の希薄化もあり、2021年12月は52件(同4.0%増)、2022年2月も39件(同5.4%増)と増勢に転じ、倒産の底打ち感が強まっている。
 2021年度(4-2月)の「新型コロナ」関連倒産は271件で、2020年度(4-3月)の203件をすでに上回っており、飲食業へのコロナ禍の影響が深刻なことを示している。

飲食コロナ

【業種別】コロナ関連倒産の構成比の最高は「居酒屋」の54.4%

 業種別は、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の137件(前年同期比14.9%減)。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」136件(同11.1%減)、「食堂,レストラン」107件(同34.7%減)の順。
 コロナ関連支援もあり、飲食業の全業種で倒産は抑制されている。なかでも、コロナ禍の生活様式の変化を背景に“巣ごもり需要”などの恩恵を受けた「宅配飲食サービス業」は16件(前年同期比51.1%減)と、年度でも2010年度(10件)以来の10件台にとどまる可能性が高い。
 業種別の倒産のうち、コロナ関連倒産の最高は、「居酒屋」の74件(構成比54.4%)だった。次いで、「専門料理店」の74件(同54.0%)、「食堂,レストラン」の53件(同49.5%)の順。

飲食コロナ

【原因別】『不況型』倒産が9割

 原因別の最多は、「販売不振」の467件(前年同期比22.6%減)。次いで、「既往のシワ寄せ」35件(同9.3%増)、「事業上の失敗」17件(同39.2%減)の順。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は502件(同21.0%減)だった。飲食業倒産に占める構成比は90.2%で、前年同期の89.2%を1.0ポイント上回り、90%台に乗せた。コロナ禍で通常営業できないシワ寄せが飲食業者の経営に影響を与えている。

飲食コロナ

【資本金別】1千万円未満が8割超

 資本金別では、1千万円未満が478件(前年同期比23.3%減)で、飲食業倒産の85.9%を占めた。内訳は、「個人企業他」が198件(前年同期比33.1%減、構成比35.6%)、「1百万円以上5百万円未満」が170件(同27.0%減、同30.5%)、「5百万円以上1千万円未満」が77件(同32.7%増、同13.8%)、「1百万円未満」が33件(同10.8%減、同5.9%)だった。
 大企業は店舗閉鎖などの縮小策で乗り切りを図るが、資産背景がぜい弱な中小・零細規模の事業者はコロナ禍で疲弊し、事業継続が難しい局面になっているようだ。

【都道府県別】増加15、減少28、同数4

 都道府県別では、増加が15道県、減少が28都府県、同数が4県だった。
 増加は、北海道(12→15件)、青森(3→4件)、岩手(0→3件)、山形(0→3件)、栃木(10→15件)、新潟(4→7件)、長野(4→8件)、静岡(17→18件)、三重(5→7件)、兵庫(42→49件)、島根(1→3件)、岡山(7→8件)、香川(1→3件)、高知(2→4件)、熊本(6→7件)。
 一方、東京(113→75件)、愛知(64→35件)、大阪(122→88件)、広島(18→14件)、福岡(40→18件)など大都市圏では減少した。

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