<心新たに 2022年春・8完>剣道 生出琴華(島原高→日体大) 悔しさ胸に個人準V 仲間との日々は宝物に

世代トップレベルの剣士に成長した生出。「準優勝を悔しいと思えるくらい剣道に打ち込めた」=島原市、島原高剣道場

 昨夏のインターハイ、すべてを懸けて臨んだ団体戦。島原はまさかの予選リーグ敗退という結果に終わった。主将の生出琴華はショックを引きずりながら、その前日に8強入りしていた個人戦へ。「チームや監督、家族、先輩たちの分まで頑張ろう」。気力を振り絞って前を向いた。結果、準々決勝、準決勝を得意の面で勝ち、銀メダルをつかんだ。
 悔しさと、やりきったという感覚が交錯した。振り返ると、個人戦の全7試合中4試合が延長勝ち。4回戦は約1時間に及ぶ熱戦だった。「自分らしい粘り強さを出せた」。今は胸を張って言えるようになった。
 大阪市出身。島原の剣道を初めて見たのは小学6年の時、4歳上の姉の試合を応援しに行った2015年近畿インターハイの会場だった。全国トップ級チームの「美しく、力強い剣道」に魅了された。中学3年時に全国中学大会で個人優勝した後、島原の練習に参加。「稽古の雰囲気や前に押し込むスタイルが自分に合う」と越境入学を決めた。

インターハイ女子個人で準優勝した生出=金沢市、いしかわ総合SC

 1年時の長崎県高総体準決勝から中堅で起用された。「県では島原が圧倒的だと思っていたら、そんな簡単ではなかった」。そのハイレベルな長崎を勝ち抜くと、続く夏のインターハイは次鋒として8強入りに貢献。代替わりして、中学時代から全国で実績がある岩本瑚々(筑波大)が主将になった。
 だが、その日本一を十分に狙えるチームは、コロナ禍で選抜、インターハイ、国体と活躍の場を失った。卒業式の日、岩本に言葉をかけられた。「私たちの分まで背負わなくていいよ。自分たちのことだけ考えて」。無念さを抑えて後輩を思いやる姿に、胸が締めつけられた。
 チームで最高学年となり、岩本と同じく主将、大将を任された。コロナ禍に悩まされながらも、福田俊太郎監督が説く「自立」を体現。「どんなときでも自分で考えて乗り越えていく」。県高総体では「打倒島原」に燃えるライバルを退けて全国切符を譲らなかった。
 最後のチャンスだった三重国体は中止になった。団体で頂点に届かず、心残りがないと言えばうそになる。でも、親元を離れて、伝統校で仲間と過ごした日々は宝物になった。「準優勝を悔しいと思えるくらい打ち込めた」。さらなる高みを目指して、これからも「目の前の練習、試合での切磋琢磨(せっさたくま)」を続けていく。


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