SFライツテストに参加した菅波冬悟と川合孝汰。メーカー育成枠外から上位カテゴリーを狙う

 3月8〜9日、三重県の鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の合同テスト。13台がエントリーし、そのうち12台が走行したが、2021年12月のテストにも参加した菅波冬悟(Byoubugaura B-MAX Racing 320)、川合孝汰(Rn-sports 320)という、スーパーGT GT300クラスをはじめ、さまざまなカテゴリーで活躍するふたりのドライバーが参加した。彼らの狙いはなんなのかを聞いた。

■「GT500とSFのために避けては通れない」──菅波冬悟

 全日本F3選手権として長い歴史を誇ってきたシリーズは、2020年からスーパーフォーミュラ・ライツと名称が改められたが、今も昔も国内外のトップカテゴリーにドライバーを輩出してきた。そんなカテゴリー参戦に向け、2021年12月の鈴鹿テストからB-Max Racing Teamに加わったのが菅波だ。

 菅波は全日本カートを経て、2019年までFIA-F4で戦い優勝も遂げた。2019年シーズン途中からはK2 R&D LEON RACINGに加わり、スーパーGTに参戦。2020年には優勝も飾った。2021年にはTGR 86/BRZ Raceでチャンピオンを獲得するなど、素晴らしい実績を残している。

 そんなハコでの実績充分の菅波が、12月のテストにはTGR 86/BRZ Raceでの賞金を投じライツのテストに参加。このときはウエットだったが、3月8〜9日のテストにふたたびB-Max Racing Teamから参加すると、ドライで印象的なスピードをみせ、上位タイムをマークしてみせた。

「最後のセッション3では僅差の2番手だったので、悔しいところも大きいですが、僕は2年ほどフォーミュラから離れていたので、この2日間のテストでいかにクルマの特徴をつかみ、走らせ方などを突き詰められるかを意識していたので、2日目の最後でこのタイムを出せたのは、最低限良かったと思います」と菅波は2日間のテストを振り返った。

 チームからはまだ正式なアナウンスはないが、今季菅波はチーム育成枠の50号車をドライブすることになりそう。2年間フォーミュラからは遠ざかっていたが、ハコではその実力を存分にみせてきたいる。それほどまでにスーパーフォーミュラ・ライツへこだわる理由を聞くと、「FIA-F4に出ている頃から出たかったカテゴリーです。スーパーフォーミュラやGT500までの道は、ライツで結果を出さなければ開けないと思います。避けては通れないカテゴリーです」という。

 ただ菅波はメーカー育成プログラムのドライバーではなく、金銭面の負担があった。「やはりその面が大きく、なかなかチャンスを得るのは難しかったんです。ただ思いとしては四輪に上がってからはずっとあった」と努力を続け、今回のチャンスを得た。

「スーパーフォーミュラ・ライツは金銭面で何年も悠長にできるものではないですし、もう26歳という年齢で、自分が目標とするGT500、スーパーフォーミュラに上がるためにはこのカテゴリーで結果を残すことが大事です。ラストチャンスなので、合同テストからトップで始めたかったのですが、チームは競争力がありますし、チャンピオン争いができると思うので、この2日間学べたことを次回以降に活かしていきたいですね」と菅波は言う。

「フォーミュラはFIA-F4以来ずっと乗っていなくて、チャンスをいただいたカテゴリーで精一杯速く走るために突き詰めてやっていましたが、ライツに出るために特段のことはしていないので、ブランクは正直あります。でも、学んできたことは2年ぶりにフォーミュラに戻っても役に立っています」

 B-Max Racing Teamは2021年にチャンピオンを獲得した名取鉄平をはじめ多くのドライバーを輩出。チームから育ってきたドライバーたちが、後輩にアドバイスを送ることもしばしばある。菅波は「現役でスーパーフォーミュラを戦っているドライバーさんにアドバイスをいただけたり、データを見ていただけたりするので、すごく恵まれた環境でできます」とこのチームでのメリットを感じているという。

菅波冬悟(Byoubugaura B-MAX Racing 320)
菅波冬悟(Byoubugaura B-MAX Racing 320)

■「動かなければ仕方ない」とテストに参加──川合孝汰

 一方、ルーニースポーツからテストに参加し、スーパーフォーミュラ・ライツを初めてドライブしたのは川合。菅波同様、2019年までFIA-F4で戦い、2020年からは埼玉トヨペットGreen Braveに加わり、スーパーGTやスーパー耐久、TGR 86/BRZ Raceなどマルチに活躍。GT300でもスーパー耐久でも2勝を飾るなど、高い評価を得た。

 ただやはり、川合も自らの目標達成のために、スーパーフォーミュラ・ライツは欠かせないカテゴリーだという。「去年から服部尚貴さんをはじめ、関係者の皆さんに相談はしていたのですが、もともとフォーミュラをずっとやっていきたい気持ちがあったんです。僕の最終的な夢、目標というのがヨーロッパでフォーミュラをやることで、そのために、まずは30歳までにGT500、スーパーフォーミュラにステップアップするというのを、ひとつ目標として掲げているんです」と川合。

「その目標のためには、GT300に乗っているだけではGT500のテストには呼んでもらえないよ……ということを聞きましたし、メーカーさんもスーパーフォーミュラと併催で開催されているライツを見ているので、出る必要があると聞いていました。ただ費用の面もあるので、なかなか勝負できなかったのですが、動かなければ仕方ないですから。ルーニースポーツさん、植田正幸さんにご相談させていただき、なんとか今回テストをすることができました」

 こうしてテストに参加した川合だったが、「スポイラーがついていないのでヘルメットが上がって来ちゃって(苦笑)。F4と同じ感覚でいたので、少しライツの空力をナメてましたね。コーナーで首が上がってしまうんです」と思わぬ事態に遭うも、少しずつペースを上げ、2日間で上位が見える位置までタイムをマークした。

「今まで経験したことがないコーナリングスピードでしたが、僕が乗ってきたクルマとは走らせ方がかけ離れていて、初日はそこに苦戦していました。2日目になり慣れてきましたし、やっとニュータイヤを履けましたが、アタック中にガス欠症状が出てしまって。まだトップは見えませんが、近いところにはいける感触がありました」と川合は振り返った。

 現状、川合は第1戦富士への参戦は決まったものの、「まだそれしか決まっていなくて。他のレースは基本的にスポットで、どこに出られるかは資金次第です。なんとか一戦でも多く出たいと思っています」という。

 川合は菅波よりもひとつ年上だが、同世代。川合は「冬悟には負けたくないですね(笑)」とも言う。また今季は、同じ世代でFIA-F4を戦ってきた平木湧也、平木玲次もスーパーフォーミュラ・ライツに出場する。メーカーのスカラシップを受けている今季の参戦ドライバーたちよりは世代が上だが、彼らにも負けたくはないはずだ。

 ふたりがともに目標とするGT500、スーパーフォーミュラは、どちらもやはりメーカーの育成ドライバーが多い。しかし近年、そんな流れを覆すドライバーたちも生まれてきている。多くの支えがあってこそ実現する挑戦だが、彼らのチャレンジが結果に結びつくことを願いたいところだ。

スーパーフォーミュラ・ライツの鈴鹿合同テストに参加した川合孝汰
川合孝汰(Rn-Sports 320)

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