メクル第612号 ニホンアカガエルの卵 校内で発見! 長崎県の準絶滅危惧種 長崎市立野母崎小中一貫校 青潮学園

ゼリー状のニホンアカガエルの卵を触る子どもたち=長崎市、青潮学園

 ことし1月の終わり、長崎市野母(のも)町の市立野母崎小中一貫校(いっかんこう)「青潮(あおしお)学園」(修行勝則(しゅぎょうかつのり)校長、小学校109人、中学校63人)に特大ニュースが駆(か)け巡(めぐ)りました。体育館裏(うら)の水たまりで県の準絶滅危惧種(じゅんぜつめつきぐしゅ)である「ニホンアカガエル」の卵(たまご)が見つかったのです。
 同校4年の新聞係は「青潮ニコニコ新聞」の号外を発行して校内で大きく報道(ほうどう)しました。今回はそんな4人とメクル編集室(へんしゅうしつ)が共同で取材。専門家(せんもんか)へのインタビューなどを子どもたちが担当(たんとう)しました。

ニホンアカガエルの卵が見つかった体育館裏の水たまり

 4年生は理科の授業(じゅぎょう)でチョウの幼虫(ようちゅう)やトンボなど、季節ごとに動植物の観察を続けてきました。1月の終わりに理科を担当(たんとう)する桑岡佳朗教諭(くわおかよしろうきょうゆ)(61)が体育館裏(うら)の水たまりを見ると、カエルの卵(たまご)がありました。それが県の準絶滅危惧種(じゅんぜつめつきぐしゅ)に指定されている、とても珍(めずら)しいニホンアカガエルのものだと分かったのです。
 昨年1月にも、学校に近い野母崎総合(のもざきそうごう)運動公園内「水仙(すいせん)の里」の池周辺で12年ぶりにニホンアカガエルの卵が確認(かくにん)され、ニュースになったばかり。今回は学校の敷地(しきち)内で見つかるといううれしい出来事に、みんなで喜びました。
 地域(ちいき)で命をつなぐ希少な動物を見守ろうと、卵の一部を校舎(こうしゃ)の中庭と教室のそばに置き、小さな卵の変化が分かるよう顕微鏡(けんびきょう)も設(せっ)置(ち)。黒くてまんまるだった卵はだんだんと細長い形になりました。教室そばの卵は2月7日に、気温が低い中庭の卵は同15日にふ化が始まったことから、気温や水温の差で成長のスピードが違(ちが)うことが分かります。
 16日、再(ふたた)びみんなで体育館裏に行くと、水たまりには卵がまた増(ふ)えていました。「タピオカみたい」「黒豆っぽい」「できたてのスライムって感じ」-。4年生は卵を手で触(さわ)ったり、虫眼鏡(むしめがね)でのぞいたりして記録しました。

2月に発行した「青潮ニコニコ新聞」の号外

 「卵の全部がオタマジャクシになったら足の踏(ふ)み場もなくなるよね? でもそうじゃない。どうして?」。桑岡先生がみんなに問(と)い掛(か)けました。一つの卵の塊(かたまり)には600~700の命が集まっていますが、水が干上がって生きていけなくなったり、他の生きものに食べられたりして、カエルになれるのはほんの数匹(すうひき)だそうです。「虫を食べるカエル、それを食べるトリ、いろんな生き物がいて、どれも自然の大切な一部分。ニホンアカガエルを大事にすることが他の生き物も守ることになる。まずは身近な変化に関心を持つようにしよう」と続けました。カエルになった姿(すがた)が見られるのは5月以降(いこう)。学校で生まれた小さな命が野母崎の自然にかえる日まで、見守りは続きます。

【ニホンアカガエル】
 本州、四国、九州にいる日本の固有種。長崎県では本土、壱岐、平戸に生息。野母崎地区では2009年を最後に産卵の確認が途絶えていた。オスは4~5センチ、メスは少し大きめの約5センチになる。

◎Q&A どれくらい希少なの? カエル先生にインタビュー 長崎女子短大幼児教育学科 松尾公則教授(70)

 生きものに詳(くわ)しい“カエル先生”こと長崎女子短大幼児(ようじ)教育学科の松尾公則教授(まつおたかのりきょうじゅ)(70)に、新聞係がインタビューしました。

 Q1 ニホンアカガエルがどうして学校のうらに来たのですか?
 A どうしてきたのかは分かりません。だけど、ニホンアカガエルは遠くまで動けるから、たまたま学校のうらにある水のたまり場を見つけて、そこに卵(たまご)を産んだのかもしれません。

 Q2 ニホンアカガエルはどれくらい希少ですか?
 A 40年前には田んぼがいっぱいあったから、ニホンアカガエルもいっぱいいました。だけど、今は田んぼが少なくなって、減少(げんしょう)しました。

 Q3 どうして県の準絶滅危惧種(じゅんぜつめつきぐしゅ)になったのでしょうか?
 A その理由は、田んぼが減(へ)って赤ちゃんが育たなくなったからです。田んぼを増(ふ)やすことで絶滅を防(ふせ)ぐことができると思います。

 Q4 昔はどのくらいいたんですか?
 A 40年前には、野母崎(のもざき)じゅうに、ニホンアカガエルがいました。毎年、水仙(すいせん)の里の川のところに卵を産んでいたようです。しかし、10年前から急に減ってきました。

 Q5 私(わたし)たちにできることはありますか?
 A 体育館のうらの水は、ほうっておいたらなくなります。おたまじゃくしは、5月すぎにカエルになります。だから、うらの池に水を入れることが大事です。

◎取材を終えて

 カエルについて知りたいことが、まだまだたくさんあります。もっと調べたくなりました。取材は緊張(きんちょう)したけれど、楽しかったです。
(内野陸(うちのりく)、大崎光希(おおさきこうき)、内野真琴(うちのまこと)、米澤陽菜(よねざわひな))

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