笑顔の卒業式「通えて良かった」 分校から本校に戻る横浜・北綱島特別支援学校 難病児の保護者ら感慨 

バギーに乗った加藤龍治さんと一緒に卒業式の会場に向かう母の千春さん=横浜市港北区の北綱島特別支援学校

 2022年度に分校から本校に戻る横浜市立北綱島特別支援学校(同市港北区)で12日、卒業式が開かれた。学校存続を巡って揺れ続けただけに、保護者らは「この学校に通えて本当に良かった」と笑顔で喜びを分かち合った。

 卒業生13人(高等部6人、中学部5人、小学部2人)の門出を祝う式典には、高等部3年、加藤龍治さん(18)の姿もあった。筋肉が徐々に衰える難病「筋ジストロフィー」当事者で、知的障害は最重度の「A1」。たんの吸引や胃ろうなどの医療的ケアも必要だ。

 閉校計画が明らかになったのは、15年9月。学校存続を求める活動に、母親の千春さん(53)も加わった。夜間もケアで睡眠時間を3~5時間ほどに削りながら、分校移行が決まった17年度はPTA会長として活動の先頭に立った。

 龍治さんは、分校移行と同時に高等部に進学。2年生の時、誤嚥(ごえん)防止のために喉頭と気管を分離する手術を受けて声が出せなくなった。手術や入院で欠席が増えたが、大好きな学校に来れば笑顔を見せたという。教諭は「愛嬌(あいきょう)のある龍治さんが登校すると、教室が明るくなった」と振り返る。

 千春さんは教諭とのやりとりで家庭とは違うわが子の一面を知り、他愛のない話で笑い合い、学校が親子のよりどころになっていることをあらためて感じた。

 そんな大切な学びやが本校に戻る。卒業前に一定の区切りがついてほっとしたものの、横浜市教育委員会の一連の対応にはわだかまりが残る。「それでも前を向いていきたい」。龍治さんは4月から施設に通う新たな生活が始まる。

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