BUSOU Drago CORSE発進。21年ぶりコンビの柳田&井出、そして道上龍監督が語るテスト初日

 3月12日に岡山県の岡山国際サーキットでスタートしたスーパーGT公式テスト。2022年に参戦するほとんどのチームが顔を揃えるテストだが、GT300クラスに参戦するBUSOU Drago CORSEは、オフに大きな話題となったチームのひとつ。モビリティリゾートもてぎで行われたシェイクダウンに続き、コラボレーション後初めての公式テストに臨んだ。

 これまでホンダNSX GT3を走らせてきた道上龍率いるDrago CORSEと、純国産、開発から製造のすべてを日本国内で行うなど、“ジャパンデザイン”をコンセプトに、日産車のエアロパーツを中心に手がけてきたBUSOUがコラボレーションし、2022年からスーパーGTに参戦することになったBUSOU Drago CORSE。チームはもてぎで今季使用するニッサンGT-RニスモGT3を走らせた後、岡山公式テストに臨んだ。

■21年ぶりのコンビ。後半戦の上位争いを見据える

 今季ステアリングを握るのは、GT500で二度、GT300で二度のチャンピオンの経験をもつ柳田真孝と、2018年以来のGT300参戦となる井出有治のコンビ。GT500チャンピオン経験もある伊与木仁チーフエンジニアとも真剣な表情で話し合う光景も非常に新鮮だ。

「ありがたいです。レーシングドライバーとして集中できる環境があり、こうして走らせてもらえますから。昨年のArnage Racingでも自分の好きなように、良い環境でやらせてもらいましたが、ここでも事前にたくさん準備をしてもらいました。幸せですね。まだテストですし、いろいろ必要なものはありますが、ベースとしてはすごくやりやすい。温かく迎え入れてくれたので、それに応えたいです」というのは柳田だ。

 柳田は使用される現行モデルのGT-Rの開発ドライバーも務めてきたが、「開発はしてきたけど、レースでは初めてなので、突き詰めて細かくやらなければいけない」という。そしてダンロップは2017年にAudi Team Hitotsuyamaで使って以来だが「クルマが全然違いますからね。クルマの方向性、ダンロップと、すべてポテンシャルを引き出すのはこれから勉強です」とまだまだ課題は多いという。

 そんな柳田と、なんと2001年以来21年ぶりのコンビを組む井出は、「ひさびさの感覚はありましたが、走り出したら違和感はないし、ペースもすぐ掴めました」と問題なくテスト初日を終えたが、この日の井出にはひとつミッションがあった。 2シーズン以上シリーズに参戦していないGT300ドライバーに課せられる、ルーキーテストを受けなければならなかったのだ。

 ただこれも「ルーキーテストはちょっと緊張しました(笑)。僕は気にしませんでしたが、伊与木さんとかまわりが緊張してました」とあっさりこなしている。柳田も井出については「技術面は心配していないし、今日もすごく良いタイムで走ってくれています」という。

「スーパーフォーミュラのThreeBond Drago CORSEと変わらないチーム体制ですし、クルマが違うだけなので、体制についてはまったく不満も不安もないです。自分がしっかりしないとと思っています」と井出。

 今季の目標を井出に聞くと「チャンピオン……と言いたいところですが、そんなに甘いレースではないですからね。いくら伊与木さんがエンジニアで、4MINUTESさんがメンテナンス、道上さんが監督、相方がマーとはいえ、やっぱり勝つレベルまで引き上げるのは簡単ではないと思います」と語った。

「でもそれだけの能力がある人が集まっていますし、シーズン後半くらいにチャンピオンの可能性を残せるような戦いをしていきたいです」

BUSOU raffinee GT-Rの井出有治と柳田真孝
BUSOU raffinee GT-Rをドライブする柳田真孝

■道上監督が乗らずとも感じたNSXとGT-Rの違い

 そんな新たなチーム体制だが、「接点なかったですねぇ。GT500のときは争っていたライバルでしたからね」とニッサン系のチームで戦うことが多かった柳田が新鮮に感じるのは、やはり道上龍監督率いるDrago CORSEとの仕事。「テスト2回目ですが、違和感なく仕事ができています」というが、それでもやはり、道上監督がニッサン系チームが並んでいるピットにいるのは、慣れるまでに時間がかかりそうだ。ホンダのウェアを着たスタッフたちが遠慮がちに挨拶に訪れる様子も。

 初日の走行後、道上監督に聞くと「ずっとサインガードにいて足痛いですわ〜(笑)。自分が走っていないとなんだか不思議な感じですね。GT500でも2年間監督やりましたし、スーパーフォーミュラでも監督ですが、違う感じをうけます」と笑う。

「まわりの雰囲気には慣れました。ニスモの役員の方も来てくださって挨拶して。ダンロップさんはNAKAJIMA RACING時代にやっていたので知っていますし、ふたりのベテランと一緒に楽しくやれています。ドライバーふたりの良いところをどう引きだそうか考えたり、面白いです」

 そんな道上監督だが、2021年まで“現役”で乗っていただけに「乗っているわけではありませんが、NSXとは違う、GT-Rというクルマの良さを感じました。ラップタイムも安定しているし、良い意味で“ハコ車”なんです」とGT-Rを評する。また昨年までNSX GT3をメンテナンスしていたスタッフたちもGT-Rの違いをさまざまなかたちで感じているよう。

 今季は監督という立場だが、ドライバーふたり、そしてエンジニアに有効なアドバイスをするためにも、道上監督自身が一度GT-Rをドライブしてみるのも良いのでは……? と勧めてみると、「どこかで乗せてもらおうかな。いつでもいける準備はしておきますよ」という。

 ちなみに、ドライバーライセンスのグレードを維持するためには、年に一度は全日本選手権クラスのレースに出る必要があるそうで、2018年に柳田が韓国でのレースを中心に戦っていたときも、スーパーGT第5戦富士でRUNUP RIVAUX GT-Rの第3ドライバーに登録し、公式練習を走ったことでグレードを保てたのだとか。

「登録だけはするかもしれません(笑)。公式練習で1周走るだけでもいいらしいですから」と道上監督。BUSOU raffinee GT-Rと柳田、井出のベテランコンビが今季どんな活躍をみせるのか大いに楽しみなところだが、道上のGT-Rドライブもちょっぴり(?)期待してもいいのかもしれない。

BUSOU Drago CORSEの道上龍監督
BUSOU raffinee GT-R

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