政界引退を表明した 金子原二郎農相 次世代にバトンタッチ

「新しい世代にバトンタッチしたい」と話す金子農相=農水省

 〈長崎県選出の金子原二郎農相(77)=自民党=が今夏の参院選に出馬せず、任期満了で政界を引退することを表明した。県議からスタートし、衆院議員、知事、参院議員と約47年間にわたった政治家生活に幕を下ろすことを決めた理由は何だったのか聞いた〉

 -突然の政界引退表明だった。
 長崎県の将来を考えたとき、県政界も時代とともに新しい世代に代わっていくべきだと前から思っていた。これが一番の理由。県全体を見渡してみても世代交代の時期に差しかかっていると感じていたし、バトンタッチの時だと。少し遅かったと思っているぐらいだ。今は体力、気力ともに十分あるが、参院選で当選した場合、6年の任期中に健康上の問題があれば、いろいろと迷惑を掛けてしまうとも思った。

 -知事選では現職だった中村法道氏ではなく、新人の大石賢吾氏を応援した。
 少しお騒がせしたという気持ちもある。従来、中村県政を支えてきた立場。最後は引導を渡すような形にもなり、中村さんには申し訳ないと思う。私自身、周囲から「参院選に影響しますよ」と言われたが、長崎県の将来を考えたとき、そんなことは正直どうでもよかった。
 昨年、中村さんから後継者について相談を受け、その後、やっぱり自分で出るとなった。一度辞めると言った人が次の4年も務めてはどうしても惰性が生まれてしまう。それは長崎県のためにならない。懸案の問題を解決するためにも心機一転、代わった方がいいと思った。

 -現職閣僚の立場。岸田文雄首相の反応は。
 同じ派閥で長年一緒にやってきて、一度決めたことを曲げない性格をよく分かっている。慰留されたけれども最後は「非常に残念だ」と。農相の任期はしっかり全うしてほしいと言われた。もちろん強い気持ちを持って臨む。

 -農相に就任して間もなく半年になる。
 非常に忙しい毎日だ。食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは国家、国民に対する基本的な責任だとの考えで職務に当たってきた。今、コロナ禍で影響を受けた食品産業や生産者へのケア、ウクライナ情勢などで不安定になっている輸入作物、燃油高騰への対応など取り組むべき課題は多い。農林水産省の事業はかなりの部分でセーフティーネットをつくっている。構築した安全装置を活用しながらこれらの課題に対応していきたい。
 国会では予算が通過すれば法案審議に移る。農水省からは6本の法案を提出しており、一つ一つ丁寧に対応していく。

 -引退後は。
 どういう形になるのか分からないが、人脈を生かして政治活動は続けていきたい。県議初当選の時から、ふるさとの発展なくして国の発展はないと考えて活動してきた。強い郷土愛はこれからもずっと変わらない。次の世代の人たちにもそうあってほしいし、お役に立てればとも思う。

 【略歴】かねこ・げんじろう 平戸市生月町出身。慶大卒。1975年の県議初当選から議員活動をスタートさせ、衆院議員を経て、知事を3期務めた。2010年の参院選で初当選し、現在2期目。参院予算委員長などを歴任。


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