住宅購入予定の30代夫婦「住宅ローンの固定金利VS変動金利はどうやって決める?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、ともに30歳のご夫婦。住宅を購入予定ですが、固定金利にするか変動金利にするか、また、頭金はいくらにすればいいか悩んでおり、判断基準が知りたいといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。


夫、妻とも中小企業会社員、世帯年収は900万程度です。

住宅を購入予定ですが、固定金利にすべきか変動金利にすべきか悩んでいます。物件購入額は3,800万円、借入額3,400万、返済期間35年です。

毎月変動金利だと0.6%、10年固定金利だと1.1%、フラット35Sだと1.4%、またこれらの組み合わせが可能で悩んでおります。皆さんどのように決めてらっしゃるのでしょうか? 今後今までのような金利が続けば変動金利でもよいのですが、自信が持てず。また借入額もフルで借りるべきか、頭金を出すべきかなども悩んでおります。現在選ばれている傾向や、今後の政策の傾向などご教示いただけると助かります。

【相談者プロフィール】

・女性、30歳、会社員

・夫:30歳、会社員 ・子ども:3歳(0歳から保育園)

・住居の形態:戸建て購入予定(東北地方)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:190万円

・毎月の世帯の支出の目安:38万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万6,000円

・食費:8万円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:3万円

・保険料:1万円

・通信費:1万円

・車両費:2万円

・お小遣い:3万円

・その他:11万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):700万円

・現在の投資総額:400万円

・現在の負債総額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。住宅購入する際のローンの組み方についてのご相談です。金利の低い変動金利がよいのか、固定金利にするべきなのか、また頭金を入れた方がよいのか、多くの方が悩まれると思います。変動金利や固定金利の特徴を整理しながら、ご自身に合った住宅ローンの組み方について考えてみましょう。

住宅ローンを組む際、「変動金利」や「固定金利(期間選択型)」「固定金利(全期間)」というように、金利のタイプを選ぶことになります。金利タイプの選び方は、今後の金利の動きをどう考えるかによって変わってきます。また、ご家族構成やライフプラン、資産状況によっても最適な選択が変わってきます。

まずは、住宅ローンの金利タイプの特徴について見ていきます。

変動金利は、繰り上げ返済の余裕がある人向き

変動金利は、固定金利と比較すると金利が低いというのが最大のメリットです。

変動金利は市場金利の変化に伴い、一般的には6カ月ごとに金利が見直されます。適用される金利は6カ月ごとに見直されますが、返済金額は5年ごとに見直しされるという特徴があります。また、金利の見直しの際に大幅に金利が上昇していたとしても、これまでの返済額の125%を超えないというルールがあります。ただし、その分元本が減らないことになるため、将来的に未払い利息が発生する可能性があることに注意する必要があります。

将来の金利上昇に備える必要があるので、固定金利より当初の返済額が抑えられる分、繰り上げ返済で元本を減らすことができれば、将来の金利上昇の影響を軽減することができます。

手元資金が潤沢で、いざとなったら金利上昇に対応できる人や、金利上昇のリスクを許容できて、結果的に総返済額を減らすことを目指したい方には向いていると言えるでしょう。

固定金利(期間選択型)は、教育費負担中など一定期間だけ金利上昇を避けたい人向き

固定金利(期間選択型)は変動金利よりも金利が高く、固定金利(全期間)より低くなります。固定期間は10年や15年など選ぶことができます。この期間内は返済額が変わらないので、子どもの教育費負担などを抱え、急激な金利上昇による負担増を避けたい方には効果的です。当初選択した期間が終了すると、その時点で変動金利、固定金利を選択することになります。もちろん、その段階で金利が上昇している場合は、その影響を受けることになります。

固定金利(全期間)は、返済計画の立てやすさを重視する人向き

固定金利(全期間)は市場金利の変動に左右されず、返済額が固定されるので、返済計画が立てやすく、金利上昇に対して不安を覚えることもありません。ただし、将来の金利上昇リスクをあらかじめ織り込んでいると言えるので、変動金利と比べると、金利が高くなります。

固定金利の場合は、将来の金利上昇による返済金額が上がることを心配する必要がありません。リスクに対して不安を感じやすい人や、コツコツと返済計画を立てたい方に向いています。

実際にローンを組んだ人はどのタイプを選んでいる?

それでは、実際に住宅ローンを組んだ方はどのタイプを選択しているのでしょうか。住宅金融支援機構による「住宅ローン利用者の実態調査(2021年10月調査)」によると、以下の結果となっています。

変動型 67.4%
固定期間選択型 21.7%
固定全期間型 10.9%

当初の月々の返済額が抑えられる金利の低い変動型を選ぶことが多いのがよく分かります。

頭金をどれくらい入れるかの判断基準の3つのポイント

では、頭金はどれくらい入れるとよいでしょうか。
ポイントは3つです。

(1)住宅ローン控除を最大限活用
(2)団信の効果
(3)手元資金の活用

(1)住宅ローン控除を最大限活用
住宅ローン控除とは、2022年以降に居住用不動産を購入した場合、年末の借入残高の0.7%が13年間所得税から控除される制度です。頭金を入れて借入額を少なくすれば、利息負担は軽減される反面、受けられる控除額は少なくなります。

(2)団信の効果
住宅ローンを組むと、基本的には団体信用生命保険(団信)に加入します。ローンを組んだ人が死亡された場合に、残りの住宅ローンが完済される保障です。頭金を入れた場合、万が一のことがあった場合に、手元資金も減っている状況になるため、保障としての機能を活かすためには、手元に資金を残し、あえてローンを組むという方法も考えられます。

(3)手元資金の活用
現在、変動にしても固定にしても非常に低金利の為、あえてローンを組み、頭金用の手元資金を、将来的に繰上げ返済資金として効果的に活用することで、ローン控除や団信の効果をうまく活用しながら、頭金に入れる以上のメリットを享受することもできます。

ご相談者のように共働きの場合、ペアローンにして、夫婦どのような割合でローンを組むと効果的かといったご相談もよくあります。変動や固定で組んだ場合、頭金に入れた場合と、入れずに将来繰り上げ返済した場合など、いくつかパターンでシミュレーションを作成し、ご自身の考え方やライフプランに合わせた選択を目指しましょう。

© 株式会社マネーフォワード