56歳独身会社員「早期退職して母と暮らしたいけれど年金が減るのが気になる」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、離婚して一人暮らしの56歳の男性。出来るだけ早く退職して、遠方で暮らす母と暮らしたいといいますが、可能でしょうか? また、年金が減ってしまうデメリットを考慮しても早期退職したほうがよいのでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


現在56歳、独身です。離婚して子どもがおりますが養育費および教育費はもうかかりません。

出来るだけ早く会社を辞めて大阪に帰り一人暮らしの母親と暮らしたいです。早期退職できるでしょうか? 大阪に帰ったらバイトで月に10万円ほど働こうと思っています。

60歳まで勤めると65歳からの年金は年間200万円(額面)になるそうですが、今辞めると少し減るのでしょうか? なお退職金はありません。車は、今乗っているものをあと8年乗って、その後は不要です。大阪のマンションのローンはなく、管理費3万円は母が支払っています。

【相談者プロフィール】

・男性、56歳、会社員、独身(離婚)

・同居家族について:一人暮らし(別居の子ども: 22歳、24歳)

・住居の形態:賃貸(茨城県)

・毎月の世帯の手取り金額:35万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円

・毎月の世帯の支出の目安:25万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:1万円

・通信費:1万円

・車両費:1万円

・お小遣い:5万円

・その他:4万円(雑費)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:10万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,000万円

・現在の投資総額:3,000万円

・現在の負債総額:0円

飯田:今回は、出来るだけ早く会社を辞めて、お母様のいらっしゃる大阪に帰り一緒に暮したいという相談者様です。大阪に帰ったらアルバイトをして月額10万円程度稼ごうと計画しているとのこと。一番、気になっているのは、「早期退職できるかどうか」なのですが、65歳以降に受け取ることができる公的年金の金額も気になるようです。

離婚されていて、お子さんはいらっしゃるものの、養育費および教育費の支払いは終えているらしく、マイカーも現在所有している1台を8年間乗り、その後は不要と計画されています。

相談者様の場合、早期退職は可能なのでしょうか。また、したほうがいいのでしょうか。また、どのような点に注意するべきなのでしょうか。

早期退職はできるけれど、デメリットも考慮して

毎月の支出を確認させて頂きました。毎月10万円貯金されており、現在の預貯金は1,000万円、投資額は3,000万円あります。現状の預貯金と投資額、アルバイトで毎月10万円程度を稼ぐことを検討されていらっしゃいますので、早期退職をするのは可能です。

ただし、相談者様も気にされているのですが、60歳まで働けば公的年金は満額の200万円受給できるとのこと。もし、早期退職してしまったら、受給できる年金額は減ってしまいます。具体的な金額についてはシミュレーションする、もしくは社会保険事務所で確認してください。

早期退職をする場合、将来、受給できる年金額が減るだけではなく、その他のデメリットもあるのです。

日本の場合、60歳までは公的年金に加入しなければなりません。会社員などの場合、保険料は労使折半でしたが、アルバイトで社会保険制度がない会社へ勤務している、加入できない労働条件のときには、全額を自分で支払わなくてはいけません。令和4年4月から令和5年3月の国民年金保険料は、月額1万6,590円です。これだけの金額を毎月支払うのです。また、国民健康保険料にも加入しなければなりません(退職しても2年間は任意継続被保険に加入し、前職の保険に加入することも可能)。

いずれにしてもあと4年ですので、金銭面では、今の勤務先で定年まで働き続けたほうがメリットは多くなりそうです。

お母様とのコミュニケーション方法を考えてみましょう

茨城県と大阪府と、離れて暮らしており、コロナ禍のため、不安なことや不便に感じることも多いかと思います。

お母様との生活を優先したいと考えるのなら、アルバイトではなく、社会保険制度が整っている会社への転職、もしくは派遣社員として働くことをお勧めします。お母様の年齢は分からないのですが、お子さんと一緒に暮すことで身の回りの世話などが生じることで、生きがいに感じるケースも少なくありません。

大阪へ帰ってまでフルで働くのはちょっと……と思うなら、現状を維持しながら可能な限りコミュニケーションを取る時間を作ってください。たとえば、シニア向けスマホなどを持ってもらい、顔を見ながら通話する時間を増やすだけでも、お互い安心できるのではないでしょうか。もちろんコロナが落ち着いたら、会いに行く回数を増やしてくださいね。

これからのライフプランはどう考える?

毎月10万円の貯金を続けていけば、4年間で480万円貯めることができます。ボーナスからも10万円貯金されていますので、4年で40万円上乗せされます。そうすると、定年退職時には預貯金1,520万円、投資額3,000万円が手元にある計算です。

ただし、年金が受給できるのは65歳以降ですので、年金を受給するまでの間、少しでもいいのでアルバイトなどをして収入を得てもいいかもしれません。

細かいライフプランは特に考えていらっしゃらないかもしれませんが、相談者様に兄弟姉妹はいらっしゃいますか? 大阪のマンションの名義が誰になっているのか分かりませんが、もし名義がお母様になっているときには、兄弟姉妹とともにマンションを相続することになってしまいますので、住む場所がなくなってしまいます。もちろん、相談者様の名義である、もしくは一人っ子であれば、何も問題ありません。

一度、自分のお金の周り・身の周りのことと一緒に、お母様の身の周りについても考えることをお勧めします。

できるだけ早くお母様と暮らしたいという相談者様の優しい気持ちが伝わるご相談でした。ただ、お母様と暮らす年数よりも相談者様の生活のほうが、長くなるのは明らかです。まずは自分が安心して暮らせるベースを考えて、その次にお母様との生活をイメージするとよいのではないでしょうか。相談者様の気持は、お母様にもきっと、伝わっていると思いますよ。

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