撮影を継承の“入り口”に 中高生らが被爆者の「いま」を切り取る 写真店の草野さん企画 長崎

作品を見ながら、撮影した時の様子を振り返る(左から)遠藤さんと草野さん=長崎市、ナガサキピースミュージアム

 撮影を継承の“入り口”に―。県内の中高生らが被爆者の「いま」を写真に収め、体験を聞き取るプロジェクトの作品展が、長崎市松が枝町のナガサキピースミュージアムで開催されている。企画したのは同市の写真店経営、草野優介さん(34)。柔和な表情のポートレートや、若者が被爆者に聞いた平和へのメッセージなどを組み合わせた作品8組が並ぶ。27日まで。
 草野さんは長崎平和推進協会・写真資料調査部会に所属。原爆写真の収集や調査の第一人者である被爆者、深堀好敏さん(93)の活動や思いをレンズ越しに追い続けている。被爆者の高齢化で記憶継承が課題となる中、「自分が続けてきたことを若い人にも体験してほしい」と考えた草野さん。若者に取っ付きやすいカメラによって継承活動のハードルを下げ、「今しか聞けない話を聞いてほしい」と企画した。
 昨秋から県内の学校や団体を通じて30歳未満の参加者を募り、10~20代の8人が参加。主に草野さんが知り合いの被爆者を若者に紹介したほか、被爆した祖母に取材した人もいた。8人の若者はそれぞれ被爆者の話を聞き取った後に写真を撮影。メインとなるポートレートと数枚のスナップ、被爆者の体験や自らの感想をまとめた文を仕上げた。
 このうち県立長崎南高2年の遠藤光さん(17)は、4歳の時に被爆した増川雅一さん(80)を取材。同校新聞部で活動する中で、災害や戦争の「記憶の継承」に関心を持ったという。遠藤さんは「大勢で被爆講話を聞くのとは違い、一対一の取材。自分が聞きたいことや、増川さんの思いを深く知ることができた」と手応えを感じた様子。増川さんも「若者と被爆者が相手の目を直接見て、じっくりと話ができる良い企画」と喜ぶ。
 草野さんは自身の経験を踏まえ「話を聞くだけではなく撮影も加えることで、より深いコミュニケーションが生まれる」と語る。今回の撮影でも、被爆者が若者に語り掛けるような柔らかい表情を浮かべ、写真に収まっていたのが印象的だという。草野さんは「若い人たちが素直な感性で撮影した写真と、考えた文章を多くの人に見てほしい」と呼び掛ける。今後もプロジェクトへの参加者を募るという。
 プロジェクトは本年度、長崎市の「平和の新しい伝え方応援事業」に選ばれている。作品展は無料。開館時間は午前9時半~午後5時半(27日は午後2時まで)。休館日は14、22日。

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