すっかり春

 品種が違っているのか、会社の近くのマンションの植栽で“桜”の木が2本、フライング気味に花を咲かせている。記憶違いでなければ確か昨年も。すっかり春▲昨日の長崎の最高気温は19.8度。5月並みの陽気だったそうだ。どうりで窓からさし込む西日がポカポカを通り越して暑かった。県内の公立中学校は卒業式。約1万1100人が思い出いっぱいの校舎を巣立った。門出にぴったりの好天▲卒業式と言えば…。〈学校の朝礼などで長年校長先生の話を聴き続けてきたけど、不思議なほど心に残っていない〉-歌人の穂村弘さんが「スピーチ」をテーマに書いたエッセーでこんな告白をしている▲〈…その理由は多分、「彼」が「私」に向かって話している、という感覚がなかったからだ。「校長先生」が「生徒たち」に向かって何を言っても「私」の心には届かない〉-が穂村流の考察だが▲異論や反論、もちろん例外もあるだろう。子どもたちの卒業やゴールは次のスタートと隣り合わせ。背中をポンと押す温かな言葉とたくさんの笑顔に彩られているといい▲さて、冒頭の“桜”だが、例えば「アーモンド」は、桜と同じ「バラ科のサクラ属」で、よく似た花を半月ほど早く咲かせるらしい。ひょっとしたら、あの2本も…。ああ、正解が気になる。(智)

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