「非人道性」非加盟国にも“効力” 対人地雷禁止条約、長大レクナが政策文書

対人地雷禁止条約について説明する目加田教授=長崎市文教町、長崎大核兵器廃絶研究センター

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は、対人地雷禁止条約(MBT)が成立から四半世紀を経て、国際社会に与えた影響についてポリシーペーパー(政策文書)にまとめた。市民活動を背景に地雷の「非人道性」を強調し、条約不参加国にも対策に乗り出させる“効力”を発揮したと評価。核兵器禁止条約の運用にも生かせると提言した。
 1997年成立、99年発効のMBTは対人地雷の使用や開発を禁じ、除去や被害者救済での国際協力も求める。2021年発効の核禁条約も核兵器の全面禁止に加え、核被害者の救済を明記。いずれも人の安全と福祉を重視した「人道的軍縮」を目指す。
 レクナの政策文書は、MBTの規範力が条約参加国以外にも及んだ例として、韓国を挙げた。韓国は朝鮮戦争の影響で多くの地雷が残るが、軍事的に必要だとしてMBTに参加していない。しかし国内外の非政府組織(NGO)が民間人の被害実態などを調べて非人道性を訴え、政府は除去や救済に乗り出した。
 政策文書は、地雷の使用や被害者の放置が非人道的だとの価値観が国際的に浸透し、韓国政府も流れにあらがえなくなったと解説した。
 一方、核禁条約には核保有国や「核の傘」に頼る国が反発して参加せず、実効性を疑問視する声もある。政策文書は被爆者や核被害者の救済を通じて非人道性を訴え、国際社会の問題意識を高めるよう提言。執筆した目加田説子・中央大教授は14日の会見で「加盟国数だけで条約の効力や有効性を考えるのは短絡的。どんな大国でも国際的に悪の烙印(らくいん)を押された兵器は使いにくい」との見方を示す。
 ロシアによるウクライナ侵攻で核問題への国際社会の関心が高まる中、レクナの吉田文彦センター長は「条約締約国かどうかを問わず、政府や市民社会が核兵器の使用・威嚇を否定する声を上げ、核禁条約の規範力を強めるチャンスだ」と述べた。
 政策文書はレクナのホームページでも公開している。


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