「雨水」で魚いきいき 水資源活用しSDGs 長崎・養殖センター尾戸

金魚の水槽を管理する店主の八重子さん。「自然の水で育てると元気がいいですよ」=長崎市琴海尾戸町

 安らぎや癒やしを届けてくれる観賞用淡水魚を養殖・展示・販売している長崎市琴海尾戸町の養殖センター尾戸では、メダカの養殖池や金魚、コイの飼育販売用の水槽に雨水のみを利用している。集めた雨水を、ろ過して殺菌。さらに循環させて再利用しており、水資源を無駄にしない。愛好家や家族連れらが眺める水槽はいつも透き通り、魚も元気だ。
 施設内にずらりと並んだ水槽の中で、赤やオレンジの金魚が心地よさそうに泳ぎ回っている。「ただ雨水を入れるだけでは、すぐに濁ってしまうんです」。店主の幸田八重子さん(76)は約20年前、夫の實さんとともに同センターを開業。二人三脚で切り盛りしてきたが、昨年、實さんが亡くなり、今は一人で施設を維持管理している。
 雨水の利用は、淡水魚の飼育に詳しかった實さんの父のやり方を手本にしたそうで、オープン当初からの取り組みだ。
 敷地内の池に雨どいなどを使って水を集め、貝殻や石灰石の入ったろ過槽で浄化。殺菌灯を当てて飼育・養殖に利用する。それぞれの水槽でもろ過と殺菌を繰り返す。
 同センターのホームページ作成を手伝っている次男誠哉さん(48)は、自然の恵みを何度も再利用し、愛好家らに癒やしも届ける取り組みはSDGsにつながるのでは、と考えている。
 誠哉さんによると、淡水魚用の水は、一般的には水道水にカルキ抜きを入れて利用する。同センターにはメダカ用の大きな養殖池のほか、コイの水槽(2~5トン)が十数個、金魚用の水槽も約40個あるが、水道水は全く使っていない。経済的であるばかりか、雨水も循環させて何度も使うので、雨水用の池の水が大幅に減ることもないという。
 数十種類の金魚やメダカ、コイの世話で慌ただしい毎日を送る八重子さんは「かわいいですよ」と目を細め、「自然の水で育つと魚も元気だし、お客さまにも好評」と笑顔で話した。


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