【高校野球】1試合で「投→二→遊→投→右→投」 歴史変える初勝利も、見せた“エースのプライド”

先発した和歌山東・麻田一誠【写真:共同通信社】

和歌山東のエース・麻田は1試合4ポジションを守り、計9イニングを4安打1失点

和歌山東の麻田一誠投手(3年)が、大忙しの1日を過ごした。19日に第94回選抜高校野球大会が開幕し、第2試合は和歌山東が延長11回の死闘を制し8-2で倉敷工を下して甲子園初勝利。1試合4ポジションをこなし、チームを勝利に導いた右腕は「喜びもあるが、最後まで投げられない悔しさある」と、エースのプライドを口にした。

麻田は7回まで好投を見せていたが8回に1死一、二塁のピンチを背負うと左腕・田村にマウンドを譲り、二塁のポジションへ。さらに2死からは遊撃に回った。9回は再びマウンドに上がり延長10回は1死一、二塁から左腕・山田にスイッチし次は右翼の守備へ。さらに延長11回は山田が2死一、二塁のピンチを作るとマウンドに上がり1点は失ったが試合を締めくくった。

1試合で4つのポジションを守ったのは「初めてです」と苦笑い。二塁手、遊撃手は練習試合で守ったことはあるが公式戦では初めて。甲子園の大舞台で不慣れなポジションにも「自分は(打球が)飛んできても絶対に捌いてやろうと思っていた」と準備を怠ることはなかった。

米原監督「うちは何でもありなんで。思い切ったことをやります」

小刻みな継投で同校の甲子園初勝利をマークした米原寿秀監督は麻田の起用法について「右バッターが打ちづらくしていたのでベンチに引っ込めなかった」と説明。二塁、遊撃と1アウトごとにポジションを変え「私なりに打球方向をイメージして。できるだけ(麻田の方に)飛ばないようにした」と“安全策”を選んだことを明かした。

チームのテーマでもある“魂の野球”を体現した指揮官。大舞台でも積極的な選手起用を行い「うちは何でもありなんで。思い切ったことやります」と胸を張った。

1試合で投手→二塁→遊撃→投手→右翼→投手と大忙しだった麻田は「最後まで投げられていない悔しさある。70点です」と試合後にはエースのプライドもチラリ。2度の降板はあったが計9イニングを4安打1失点。1勝を挙げ学校の歴史を変える立役者は背番号「1」の力投だった。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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