世帯年収1300万あっても不安な共働き妻。FPが分析する3つの不安の理由

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫と共働きで子ども1人がいる48歳の女性。子どもが中学から私立に通っており学費と塾代にお金がかかっているため、家計を見直したいと言います。世帯年収は1,300万円あり、一見すると問題なさそうですが…。不安の理由は? FPの秋山芳生氏がお答えします。


子どもが中学から私立に通っています。学費と塾にかなりかかっているため、住宅ローン、携帯など家計の見直しをし、食費は10万から8万に変更予定です。

電気代から何から何まで見直しを行ったつもりなので、これ以上何を節約すればいいかわかりません。車を手放したほうがいいと思っているのですが、主人の抵抗があります。

今は給与をもらっているほうだと思いますが、転職がうまくいっておらず、このまま維持できるかわかりません。

【相談者プロフィール】

・女性、48歳、無期雇用契約社員

・夫:48歳、会社員 ・子ども:15歳

・住居の形態:持ち家(戸建て、東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:68万円(夫53万円、妻15万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円

・毎月の世帯の支出の目安:47万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:11万円

・食費:10万円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:10万円

・保険料:1万5,000円

・通信費:1万6,000円

・車両費:3万5,000円

・お小遣い:6万円

・その他:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:14万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:200万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,500万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:2,200万円(住宅ローン:物件購入5,200万円。借入3,700万円、金利0.725%)

・退職金:あるかどうかわからず

・老後資金:公的年金26万円

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。今回は夫婦ともに48歳、お子さんが15歳のご家庭の妻からのご相談です。夫の収入が額面では1,000万円を超えており、預貯金も3,500万円あります。それでもお金の不安はなくならないようです。家計に穴が空いていないか、将来の見通しはどうか、今後のお仕事のことなど、抱えている悩みを一緒に考えていきたいと思います。

食費と教育費が高いが全体的にはそれほど問題なし

まず収支から診断していきます。

夫の手取り年収は836万円(月53万円、ボーナス200万円)ですので、額面では1,000万円から1,100万円ほど収入があります。ここに妻の手取りが毎月15万円ほどプラスされているので、世帯年収では1,300万円ほどの高収入な家庭になります。貯蓄も毎月14万円しているので資産は増えており3,600万円の資産があります。全体でみるとそれほど問題がある家計には見えません。

個別の支出を見ていくと、たしかに食費は10万円と高いので改善の余地はあります。また、教育費も月10万円と高めではあります。15歳のお子さんは、私立に通っているとのことですが、中学3年か高校1年だと思うので、学費、習い事や塾、部活などの費用がかさんでいるのだと推察します。教育費は個々の家庭ごとに価値観が異なります。お子さんの教育費を削りたくないということであれば、収支のバランスが取れる範囲でなら問題ないでしょう。

住宅費については、住宅ローン金利0.725%で残債2,200万円を11万円ずつ返済すると、17年11カ月間支払いが必要になります。さらに低金利のローンに借り換えをしても、手数料や登記費用などがかかりメリットは出ないでしょう。また、団体生命保険に加入していると思いますので、無理な繰り上げ返済はしなくてよいと思います。夫が66歳までローン返済が続く中で、もし、収入が減って返済が苦しくなる場合は預貯金を削って返済すればよいと思います。

保険は改善の余地あり。見直しポイントは?

保険料は毎月1万5,000円払っていますが、医療保険については3,500万円の現金貯蓄があれば不要です。「病気になったら怖い。保険に入っておきたい」と思われると思いますが、保険に入れば病気にならない訳ではありません。医療費は公的保険により負担が限定的です。自己負担の金額や、高額療養費や傷病手当なども理解すると、現金貯蓄があれば保険は不要であると気づけると思います。

また、夫に万が一のことがあった場合に備え、子どもが社会人になるまでの生活費や教育費の保障は必要です。しかし、ご相談者様の場合は住宅の団体信用保険があるので夫死亡時は住宅ローンがなくなり、その上で遺族年金や貯蓄3,500万円があるので保険は不要と言えます。加入する場合も5〜8万円ほどの収入保障保険にすると必要最低限でよいのではないでしょうか。払いすぎている保険を減らして、最低限の保障に変更すれば1万2,000円/月ほど少なくできると思います。

不安の原因はなんなのか?

さて、上記の状況を見る限り、一見不安を感じる必要はないようにも思いますが、不安の原因は以下のことが考えられるのではないでしょうか。

1.夫に万が一のことがあった場合、お子さんが社会人になるまでは資金が保てたとしてもその後の生活が不安

2.今後のライフイベントにかかる費用がいくらかかるのか分からなくて不安

3.夫との価値観や目線がそろっておらず不安

それぞれの不安について、解決策を一緒に考えていきたいと思います。

1.夫に万が一のことがあった場合について

女性のほうが長生きであることから、将来に対する不安は女性の方が強く感じる傾向にあります。1人になっても生きていけるよう、ご自身の収入基盤をもてると安心感が増していくと思います。現在、投資も100万円ほどしているようですが、収入を上げるためには「自己投資」が重要になります。パソコンのスキルや、ライティング能力、エクセル、VBA、プログラミング、各種の資格など、いくつになっても始められることは多くあります。リカレント教育といわれるように、生涯学んで自分をアップデートできるようになると、社会の変化についていきやすくなります。柔軟に変化できることが、将来の不安を少なくする大きな要素であると思います。

2.今後のライフイベントにかかる費用について

現在の生活費はかなり把握できているように思います。お子さんの教育費を支払ってしまったら、さらに貯蓄がしやすい状況になります。その先にかかる費用は、夫婦2人の生活費と、住宅ローン、そして住宅の維持にかかる修繕費、医療費、介護費用などです。一度どれくらいの費用がかかるのかを調べてみると、先々の見えない不安が見通せるようになり、安心感が増すと思います。分からないことや知らないことがあると不安になります。ご自身で調べることが難しければ、ファイナンシャルプランナーなどの専門家にキャッシュフロー表の作成を依頼するのも手でしょう。

3.夫との価値観や目線について

相談者さまは夫の車を売却してもらいたいと思っていますが、夫の意見は違うようです。ともに暮らす夫婦にとって何が必要で、何が必要ではないのでしょうか? 夫婦でいつまでにいくら必要なのかのファイナンシャルプランの目線がそろっていないと、それぞれの主観で平行線をたどることになります。そうすると、価値観がずれているという感覚になり喧嘩になりかねません。重要なのは、夫婦がお互いのお金の使い方を監視したり、指摘したりすることではなく、夫婦で将来どのようなライフプランを達成するかです。目標をもち、いつまでにいくら貯めればよいかなど、パートナーとして目線をそろえられると、前に向かって一緒に歩んで行きやすくなります。特にライフプランを夫婦で作ると目線がそろいやすくなります。相手が何を考えているかわかると、共に人生を歩むパートナーシップの強さが増していくのでおすすめです。

お金を使うことへの不安を減らしていく

全体的に収入は高く、支出が多すぎるということもないので、ちょっとした改善だけでもさらに貯蓄は増えていくでしょう。また始めたばかりの投資も、長期で継続すればさらに頼もしく育ってくれると思います。

その上で、先々を見通して、夫婦の目線をそろえていくことが重要になると思います。無駄遣いをする必要はありませんが、お金を使うことの不安も減らすことができれば、さらに充実した生活を送る事ができると思います。死ぬ時に一番お金をもっていてもしかたがありません。人生の中で、いつ、どこで、いくら使ってよいかを夫婦でデザインしてみるとよいのではないでしょうか。

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