気軽に平和語り合う場を 「PEACE SPOT」 長崎県内10店舗参加 被爆者リスペクト「2代目やっさん」が呼び掛け

ピーススポット企画に賛同し、2代目やっさん(左)からTシャツを受け取るカフェの店主=長崎市平和町、ピースタウンコーヒー

 カフェや美容室に、平和祈念像や「PEACE」とプリントしたTシャツがあれば目印だ。そこは、気軽に平和や社会問題を語り合える場「PEACE SPOT(ピーススポット)」。被爆遺構ガイドを「趣味」にする長崎市の30代男性会社員が呼び掛け、県内約10カ所の店舗が参加した。気負いすぎない「社会貢献」という。
 男性は本名を明かしていない。同市の被爆者で平和案内人を務めている「やっさん」こと田中安次郎さん(79)をリスペクトし、勝手に「2代目やっさん」を名乗る。インスタグラムで情報発信し、希望者に市内の被爆遺構を個人で案内している。
 祖父も被爆者だったが、以前の男性はテレビで反戦反核運動を見ても「被爆者がするのは当たり前」程度に受け止めていた。だが22歳の時、友人について行った長崎原爆資料館で、涙ながらに解説する案内役の被爆者に会って、変わった。
 次世代の若者が関心を持ってくれたら被爆者も喜ぶのでは-。そう思い立ち、スケッチブックを持ち歩いて、市民に「あなたにとっての平和」を書いてもらい撮影、市内で展示会を開いた。被爆者と語るイベントなども企画したが、そのうち周囲と温度差を感じるようになり、孤立感を深めた。「自分がしなくていいかも」。2016年ごろ、いったん手を引いた。
 活動再開のきっかけは21年1月、核兵器禁止条約の発効だった。核保有国の不参加で実効性を疑う声に対し、奮起した。「課題まで被爆者に背負わせるのか。それは俺たちの役割じゃないか」
 今度は独りではなく、「手持ち花火のように誰もが火をつないでいける」未来を描く。各店にピーススポットの趣旨を説明。テーマも、貧困や環境問題など「平和な社会」につながる多様な価値観を受け入れる。「原爆を矮小(わいしょう)化していないか」と不安もあったが、賛同が広がる手応えを感じている。
 2歳の息子を育てる親として、生活の優先順位は「家族」「仕事」の次に、平和ガイドなどの「趣味」を位置付け、無理なく月4時間までと決めている。仕事の傍ら、社会貢献活動をする-。「めっちゃイイと思いませんか。被爆地長崎にいるからこそできることもあるはずですよね」


© 株式会社長崎新聞社