読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、40歳自営業の女性。14歳年上の夫と3歳の子どもと暮らす相談者。夫があと7年で定年を迎えますが、子どもが小さいため、教育費や住宅購入費に不安があるといいます。相談者は激務のため仕事を減らしたいと希望していますが、可能でしょうか? FPの横田健一氏がお答えします。
14歳の年の差夫婦で、夫は60歳定年まであと7年です。その後65歳まで再雇用で働く予定ですが、年収は手取り300万円と激減します。
私は60歳までは働く予定ですが、激務のため、生活の目途が付けば委託業務のみに絞りたいのですが、子どもが3歳とまだ小さく、夫定年退職後の生活が心配です。子どもの進路は中学まで公立、高校私立、大学は私立理系(場合によっては6年、仕送りあり)で想定しています。
また、現在会社負担の借り上げ社宅に住んでいますが、退職後は地元に帰り、3,000〜4,000万程度の分譲マンションを購入希望です。住宅ローンを組めるのか、組めるとしたらローン総額、返済期間はどのように設定すべきなのかに関してもアドバイス頂きたいです。
【相談者プロフィール】
・女性、40歳、パートと委託業務のダブルワーク(パート手取り月収15万円+委託業務手取り月収15万円[手取り年収360万]、妻名義不動産収入年間100万円)
・夫:54歳、会社員(取り月収42万円、ボーナス200万円、手取り年収704万円)
・子ども3歳
・お住まいの都道府県:関東地方(夫の会社の借り上げ社宅)
・毎月の世帯の手取り金額:72万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円
・毎月の世帯の支出の目安:26万5,000円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:1万円
・食費:6万5,000円
・水道光熱費:2万円
・教育費:1万5,000円
・通信費:1万5,000円
・車両費:5,000円
・お小遣い:3万5,000円
・その他:医療費1万円、娯楽費1万5,000円、交通費3万円、日用品1万5,000円、ペット費1万円、雑費2万円。
・そのほか年払いの保険料や税金、帰省費用など特別支出が年間230万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:30万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:34万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):5,800万円(うち、教育費2,000万円:親族からの教育資金贈与で1,500万円、その他祝い金などで子ども名義の口座に500万確保)
・現在の投資総額:2,900万円( iDeCo1,000万円、投資信託1,900万円)
・現在の負債総額:0円
【老後資金】
・夫公的年金:65歳~基礎年金73万+厚生年金112万。税引き後手取り年額167万予想
・夫個人年金:60~65歳5年確定で年額90万
・妻公的年金:65歳~基礎年金+厚生年金=手取り年額74万円見込み(国民年金未納期間5年あり。現在厚生年金未加入)
・妻個人年金:米ドル建て。60歳~10年確定の場合年額1万1,300ドル。
・その他、妻名義の不動産収入が年額100万円ほど見込める予定です。
横田:ご相談頂きましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャルプランナー、横田健一です。
お子様がまだ3歳と小さい状況で、今後夫が定年を迎えられた後の生活について不安をお持ちになっている、というご相談ですね。
まずは現在の資産状況および今後のライフプランを前提に、今後のお金を「見える化」するところから始めたいと思います。
今後30年間の収支や資産残高を「見える化」しましょう!
最初に次のような前提で今後のお金を見える化してみます。少し保守的な前提で計算してみたいと思います。
●夫は現在のお仕事を60歳まで継続、65歳までは再雇用で働く
●ご相談者様は、今後は委託業務のみで60歳までお仕事を続ける(委託業務のみに絞りたいというご意向ですので、最初から絞る前提としています。今後お子様を育てていく上で、時間的なゆとりを確保しておくことも大切だと思います)
●ご相談者様の米ドル建て個人年金は、1ドル110円換算で年間124万円と仮定
●お子様の教育プランは、中学まで公立、高校は私立、大学は大学院修士まで私立理系で下宿生活(学費以外に年間120万円を仕送り)と仮定
●夫が60歳で定年後は家賃12万円の負担になり、その後65歳で4,000万円(諸費用込み)の分譲マンションを購入、固定資産税や管理費・修繕積立金で住居費は36万円/年と仮定(手元に十分金融資産がありますので住宅ローンを利用しないと仮定)
●分譲マンションは購入後、年率マイナス1%で減価していくと仮定
●お子様の教育資金等2,000万円は貯金総額に含まれていると仮定
●投資の運用利回りは4%と仮定
このような前提で今後30年間の収支を計算すると次のようになります。
このグラフでは、上向きの棒グラフが収入、下向きが支出、そして赤の折れ線グラフが収支(=収入―支出)となっています。
夫が定年を迎えられるまでは年間400万円程度の黒字が継続しますが、再雇用になってからは年間50万円ほどの赤字となります。夫が公的年金受給開始後は、お子様が大学院を修了されるまでは200~500万円ほどの赤字となる見込みです。
資産推移は?
この家計収支を前提とすると、資産の推移は次のようになります。
棒グラフは資産を示しており、青色が預貯金などの生活資金、緑色が投資信託などの投資資産、紫色がマイホーム、そして赤の折れ線グラフが純資産(=資産合計)となっています。
夫が84歳時点での資産合計は1億4,293万円で、預貯金1,132万円、投資資産9,856万円、マイホーム3,305万円となっています。
ご相談者様がすぐに委託業務のみに絞ったという前提でも、このような資産状況が見込まれますので、激務ということでしたら今すぐパートを辞められてもお金の面では問題ないように見えます。
もう少し積極的に運用していくとどうなるか?
現在は貯金総額5,800万円、投資総額2,900万円ということで、かなり安全資産の割合が高い状況かと思います。もう少し積極的に運用していくとどうなるか計算してみたいと思います。
今後のライフイベントを考慮して、貯金は1,800万円のみにし、4,000万円を投資に割り当てていくと仮定してみます。一度に4,000万円を投資するのはタイミングもありますので、ドルコスト平均法で年間1,000万円ずつ、4年間にわたって積立投資をしていくことにします。
すると次のように、84歳時点での資産総額が3,500万円近く改善することが見込まれます。勤労収入などの部分は何も変えず、あくまで手元のお金にもう少し積極的に働いてもらうことで、このような改善が期待できるわけです。
運用利回りを2%とした場合は?
ここまでは運用利回りが4%と仮定していましたが、さらに保守的に2%の場合で計算すると次のようになります。
4%の場合である1億7,755万円と比べると、8,000万円近く低い9,698万円となりますが、その後の人生を送る上でお金の面で困る可能性は低いと思われます。
なお、新規の投資については投資信託などの有価証券ではなく、すでに保有されているような不動産へ資金を投じていくことも選択肢になるかと思います。
いずれにしても、投資にはリスクがありますので、これはあくまでシミュレーション上の計算であることはご理解いただければと思います。
今回のポイントをまとめると…
以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。
●ご相談者様のお仕事を委託業務のみに絞ったとしても、夫が84歳時点で1億4,000万円程度の資産が残ると見込まれます。
●住宅ローンについては、実際に購入されるタイミングで利用するかどうか検討されればよいと思いますが、現在の資産状況を考えると利用する必要性は低いと思われます。
●現在は貯金の割合が高くなっていますので、もう少し投資にお金を配分しておくことで、資産形成の効率性を高められると思います。
ご参考としていただけましたら幸いです。