“長崎の歌博士” 宮川さんの保管資料1万点 保存会発足へ 文化振興に活用を

「長崎のザボン売り」の楽譜の表紙をパネルにした資料を自宅で見せる宮川さん=西彼時津町

 「長崎は今日も雨だった」「島原の子守唄」-。数多くのご当地ソングが生まれてきた長崎県で、約半世紀にわたり歌謡史研究に取り組んでいる宮川密義さん(88)。西彼時津町の自宅には、収集したレコードや研究資料など約1万点が保管されている。これらを長崎の文化振興に有効活用しようと、宮川さんの友人である長崎市の劇作家、松原一成さん(71)が中心となり保存会の設立を計画、参加する有志を募っている。

♪長崎の歌博士

 宮川さんによると、日本のレコード黎明(れいめい)期に当たる1928(昭和3)年以降に発表された本県にちなんだ歌は約2千曲超に上り、長崎は「歌の宝庫」という。
 宮川さんは長崎新聞社の記者時代に「長崎県の歌謡史」を100回にわたって連載するなど取材を通じて見識を深めた。退職後もライフワークとして市民講座の講師を務めたり、県すこやか長寿財団の情報誌「そよかぜ」で研究成果を発表したりするなど精力的に活動し、「長崎の歌博士」として知られている。

♪秘蔵の楽譜も

 現在、自宅の6畳間3室で保管する資料は▽レコードやカセットテープ、CDなどに収録された約2千曲分の音源やジャケット写真、楽譜▽宮川さんが講師を務めた「歌の長崎学研究会」などの講座テキスト▽研究成果を掲載した情報誌-など。ジャンルは民謡、歌謡曲、原爆の歌と多岐にわたり、音源やジャケット写真などは今では入手困難な物がほとんど。
 中でも97年、作詞家の故石本美由起さんの自宅(横浜市)を訪れた際に、本人から直接譲り受けた48年の大ヒット曲「長崎のザボン売り」のカラフルな楽譜は秘蔵品という。

♪観光資源にも

 一方、個人で管理するには資料が膨大で、将来的にどう保管していくのかが課題となっていた。保存会設立を進める松原さんは「いずれも長崎の歌文化の変遷をたどる上で貴重な品ばかり。観光資源としても活用できるようにしたい」と資料の価値を強調。宮川さんは「長年の研究成果を若い世代に知ってもらいたい」と話す。
 保存会発足後は保存場所の確保や展示方法などについて話し合っていく。入会など問い合わせは松原さん(電090.4993.3594)。

自宅に保管しているレコードなどの資料について説明する宮川さん=西彼時津町

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