諫干請求異議訴訟、差し戻し審 25日判決「権利乱用」焦点 福岡高裁

 国営諫早湾干拓事業を巡り、潮受け堤防排水門の開門を命じた確定判決の「無効化」を国が求めている請求異議訴訟の差し戻し審は25日、福岡高裁(岩木宰裁判長)で判決が言い渡される。国は「諫早湾近傍部で漁獲量は増加傾向に転じた」「開門強制は権利乱用」と訴えており、同高裁がどう判断するかが焦点となる。
 2010年の同高裁確定判決は、諫干事業と一部海域の漁業被害との因果関係を認め、5年間の開門調査を命じた。だが国は、口頭弁論終結後の「事情変動」を理由に請求異議訴訟を起こした。「13年以降、諫早湾近傍部で漁獲量は増加傾向に転じている」などと主張し、漁業者側に開門を強制しないよう求めている。
 この請求異議訴訟で一審佐賀地裁は14年、国の請求を棄却した。だが福岡高裁は、各漁協に付与された「共同漁業権」の存続期間(10年)が確定判決後の13年8月末に切れた点に注目。18年に「消滅後に与えられた共同漁業権は新たな権利。前提となる漁業行使権が消滅すれば開門請求権も消滅する」と判断し一審判決を取り消し、国が逆転勝訴した。これに対し、最高裁は19年、共同漁業権の解釈に誤りがあるとして二審判決を破棄、「ほかの請求異議事由の有無について審理を尽くさせるため」同高裁に差し戻した。
 差し戻し審で、国は「共同漁業権の消滅で開門請求権もなくなった」とする請求異議事由を撤回。その一方、差し戻し前の控訴審口頭弁論終結後に生じた事情変動を中心に主張を整理、補充した。同高裁が和解を促したが、国は「開門の余地を残した協議の席には着けない」と拒否、結審した。
 このほか諫干事業を巡っては、最高裁が19年、別の関連訴訟2件で「非開門」の判断を確定。「開門」と相反する司法判断が併存している。


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