年齢、勤続年数、年収…住宅ローン審査で重視されることは?後悔する前に知っておきたい「住宅ローン基準」

マイホーム購入は、人生最大の買い物。しかし、収入は上がってから、お金が貯まってからと、購入を先送りしている人も多いのではないでしょうか。もちろん、自己資金で住宅の購入資金を準備できれば問題はありませんが、住宅ローンを組むとなると、融資に通る必要があります。理想とする土地や家に出会っても、ローンが組めないと夢をあきらめざるをえません。

今回は、「買う前に知っていればよかった」と後悔する前に、住宅ローンの申し込み基準を確認しておきましょう。


住宅ローンの審査で重視される項目は?

いくら熱い情熱を持って本気で「家を買いたい」と金融機関にお願いしても、「この人にお金を貸しても大丈夫」だという審査に通らなければ、融資してもらうことはできません。購入物件が決まった後に住宅ローンの事前審査を受け、本審査で詳細な確認をし、承認がおりれば、ローン契約、物件の引き渡しを行います。

一般的に住宅ローンの審査では、「契約者の審査」と「物件の審査」が行われます。つまり、貸したお金を返済することができるのか、万一返済が難しくなって抵当権が実行されたら、担保物件の価値はどれくらいなのかということを確認します。

住宅ローンの審査基準は、各金融機関で異なります。国土交通省の「令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」には、金融機関が住宅ローンの審査において、どのような基準を重視しているかが公表されています。割合が多いものから順にならべると、以下のようになります。

融資を行う際に考慮する項目

1 完済時年齢 99.1%
2 健康状態 98.2%
3 担保評価 98.2%
4 借入時年齢 97.8%
5 年収 95.7%
6 勤続年数 95.3%
7 連帯保証 95.1%
8 返済負担率 92.1%

金融機関によって審査基準は異なるものの、審査項目で9割を超えるものは、借りる側も内容を知っておく必要があります。もし今の状態では審査に通るのが難しいのであれば、今後の工夫や努力で改善することもできるからです。

審査項目1:完済時年齢・借入時年齢

多くの金融機関では、住宅ローンの完済時を80歳としています。住宅ローンを最長で組む場合は35年なので、35年の住宅ローンを組もうと思うのならば44歳ないし45歳がタイムリミットとなります。なお、完済時年齢が定年を迎える65歳を超えると、審査を通るのが難しくなります。安定的な収入がある現役世代と違い、60歳以降の収入や年金は、将来もらえる金額が把握しづらいからです。

では、年齢が若ければ良いのでしょうか。実はそうとも限りません。20代といえば収入が安定しない場合も多いものです。国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査報告書」によれば、注文住宅、分譲戸建て住宅、分譲マンションにおいては、住宅ローンと利用した世帯主の年齢は30代が最も多くなっています。

審査で重要な基準は、「一定して安定した収入がある人」。30代といえば、収入の安定と将来の方向性が定まり、住宅購入が視野に入ってくる時期です。返済上限ではなく退職までに完済したいのなら、頭金を確保して返済を有利にするか、44歳よりも早い段階で住宅ローンの借り入れをする必要があります。

審査項目2:健康状態

民間の金融機関では、団体信用生命保険(団信)に加入することが住宅ローンの条件になっています。住宅ローンを貸す側も返済してもらえないと、大きなリスクになります。長い人生のうちには病気やケガ、万一の死亡や高度障害に備えて保険に加入しておくほうが安心です。

団信に加入するには、健康状態が良好でなければなりません。年齢を重ねてくると、思わぬ病気が見つかることもあり、そうなってからでは住宅ローンを借りることができなくなります。団信に入ることが任意になっている住宅ローンもありますが、ローン選択の幅が狭まることになります。

審査項目3:勤続年数

勤続年数については、2年以上が多数派で、3年以上を基準とする金融機関もあります。転職は、以前くらべると珍しくなくなりましたが、収入の安定という面からすると、試用期間を過ぎないと労使ともに安心できません。転職したばかりの場合、住宅ローンを申し込む期間を1~2年おいたほうがよいと言えるでしょう。

自営業の場合には、会社員にくらべて審査が厳しいといわれています。過去3年分の確定申告書の提出を要求され、事業内容にまで審査がおよびます。審査が進んでくると、追加書類を要求されることもあります。

また、契約者の勤務形態は、安定した収入であるほうが貸す側からすれば安心です。契約社員やパート職員よりは、正社員のほうが審査では有利になるでしょう。

審査項目4:年収と返済負担率

住宅ローンは、年収が低いから借りられないわけではありません。それよりも「返済負担率」といって、年収に占める年間の返済額の割合のほうが重要です。返済負担率は、下記で計算されます。

年間返済額÷税込み年収×100

この返済負担率の割合が高くなると、滞納の確率が高いと判断されます。多く金融機関では、返済負担率が30~35%以内であれば審査基準を満たすとされています。フラット35では、年収400万円未満の場合は30%以下、年収400万円以上の場合は35%以下の返済負担率であることが利用条件になっています。

しかし、借りられる額と返せる額は異なります。一般的に無理のない返済負担率は、20~25%といわれていますし、筆者としても25%までにすることをおすすめします。審査を通るためには、頭金をできるだけ準備しましょう。まったく頭金がない人は、住宅購入に無計画な人と見られてしまいます。

この年間の返済額には、車のローンや教育ローンなどの住宅ローン以外の借入金も含まれます。住宅ローンを借りるためには、こういったその他のローンを返済しておくなどの準備が必要です。クレジットカードも不要なものは、処分しておくとよいでしょう。金融機関の中には、クレジットカードを利用していなくても、カードの限度額の10%は利用しているとしてカウントするところもあるそうです。

またキャッシングやクレジットカードのリボ払いは借入金にカウントされます。キャッシングは利用していなくても含まれてしまうので、不要ならキャッシング枠の解約をするなど整理しておきましょう。

審査項目5:個人信用情報

信用情報とは、クレジットカードの契約内容やローンの借入れなどの取引記録のことです。日本信用情報機構(JICC)、CIC、全国銀行個人情報センターから個人情報を取得することができます。もし過去に滞納などがあった場合には、審査にも影響します。残高不足や滞納などの記録も5年すると消えるといわれています。

しかし、信用事故があった金融機関内では、5年過ぎても記録は消えないという話を聞きます。わずかな携帯電話料金の滞納のために住宅ローンが通らないということがないよう、普段から注意しておきましょう。


人生のうちでマイホームを購入する機会は限られています。マイホーム購入には勢いも必要ですが、まずは資金計画です。住宅ローン審査の攻略ポイントを知り、「これぞ」と思う物件に出会えたら、手に入れられるように準備したいですね。

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