【経済財政諮問会議】「健康寿命延伸」等で“新たなフロンティア”開拓を/有識者議員提出資料

【2022.03.24配信】内閣府は3月23日、「令和4年第3回経済財政諮問会議」を開き、会議資料を公開した。民間有識者は提出資料の中でウクライナ情勢等でリスクが顕在化した場合の迅速なマクロ経済運営の必要性を指摘したほか、医療・健康領域に関わる部分については、「社会保障給付の効率化と負担の増加抑制」や「健康寿命延伸による高齢者の厚生(well-being)向上と就労促進」などを提唱した。健康寿命延伸に関連しては、「可処分所得と国内投資の拡大を同時に追求することにより、脱炭素や健康寿命延伸など我が国の社会課題を解決し、新たなフロンティアを開拓すること」としている。

経済財政諮問会議に民間有識者議員が提出した資料「今後の経済情勢を見据えたマクロ経済運営について」は以下の通り。

■今後の経済情勢を見据えたマクロ経済運営について
2022 年 3 月 23 日
十倉 雅和
中空 麻奈
新浪 剛史
柳川 範之

ウクライナ・ロシア情勢等の地政学的な情勢変化は、世界のマクロ経済指標に大きな変動をもたらす可能性がある。また、エネルギーをはじめとする輸入原材料価格の上昇は、日本経済に大きなインパクトを与える可能性がある等、マクロ経済環境に関する潜在的な変動要因が増えてきている。
このような中では、リスクが顕在化した場合に迅速かつ適切なマクロ経済運営が求められるとともに、日本経済をしっかりとした成長軌道に乗せることにより、変動要因に対してより頑健性のある経済にしていく必要がある。

1.マクロショックに対する適切な対処
本来、価格の変化は需給環境の変化を表すシグナルであり、それに対する政策介入は需要側あるいは供給側の行動変容を阻害する恐れがある。ただし、大きなマクロ経済ショックが生じた場合には、更なる悪循環を生じさせないように、日本銀行とも適切な連携を行い、マクロ経済環境の安定化に資する政策を実行していく必要がある。
しかし、より本質的には、総供給力を高め、より高い成長を実現し、ショックに対して頑健性がある経済をつくることが不可欠である。

2.マクロ経済運営の基本的考え方
そのためにも、今後のマクロ経済運営においては、総需要コントロールだけでなく経済のキャパシティ(総供給力)を高める政策を重視すべきである。
3.で掲げた可処分所得と国内投資の拡大を同時に追求することにより、脱炭素や健康寿命延伸など我が国の社会課題を解決し、新たなフロンティアを開拓すること。また、それに合った柔軟な労働移動や更なる正規化の推進を目指すことが必要である。官はビジョンを示し、重点的で効果的な財政政策を行いながら、官民連携して我が国の物的・人的投資を拡大し、新しい成長モデルを創造していくべきである。

3.可処分所得と国内投資の拡大
(1)可処分所得の持続的な拡大
・兼業・副業を含む労働移動の促進による賃金・所得の拡大
・柔軟な働き方による賃金体系の見直し、人的資本の強化による恒常所得の拡大
・不本意な非正規労働者の正規化支援
・全世代型社会保障による分配構造の見直し、社会保障給付の効率化と負担の増加抑制
・健康寿命延伸による高齢者の厚生(well-being)向上と就労促進

(2)社会課題の解決に向けた官民連携・国内投資拡大
・世界にコミットした日本の脱炭素目標達成へのロードマップ作成と国民的共有
・社会課題解決に向けた官民投資マーケットの拡大
(GX、DX、イノベーション投資、健康・予防など)
・スタートアップ促進等による先端技術の事業化
・「人への投資」の拡大、マーケットによる非財務指標評価の促進

■内閣府HP資料掲示URL
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/0323/agenda.html

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