「お茶もダメ、息子の塾もダメ」夫の節約主義に追い詰められ離婚もよぎる36歳専業主婦

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、会社員の夫と小学1年生の子どもと暮らす、36歳専業主婦の女性。夫の節約意識が高すぎて精神的に限界を迎えており、離婚が頭をよぎることもあるといいます。夫と価値観をすり合わせ、無理なく家計を回していくにはどうすればいいのでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。


夫がケチすぎて困っています。

今まで節約を頑張ってきたおかげで、お金は結構貯められたと思います。そのはずなのに、「老後資金にはまだ足りない」と、未だに節約、ケチケチする生活が続いています。

今、子どもが一人おり、兄弟をつくってあげたいと私は思っているのですが、夫は「お金が足りない」と。「お金が足りない、お金が足りない」という言葉を聞くのも疲れてきました。

節約は、例えば生命保険に入ったほうがいいと思ったら、「相談料がもったいない」と、無料相談窓口へ。有料でも公平に検討してくれる方のところに相談に行ったほうが適正な保険に加入できるという話を私は聞くのですが、夫は手元から出ていくお金しか見てくれません。

また、新聞はとらずネットニュースで済ませる、小さい子がいるから自動車移動をしたいのに「維持費がもったいない」と売ってしまい、どうしても使いたいときは、少し離れたレンタカーショップで借りるように言われたり。

私のお友達とのお茶代もダメ、息子の塾も高いからダメ。そのくせスマホは大手キャリアじゃなきゃダメ、とこだわり方や節約の仕方の意味が分からず、ほとほと嫌になってきています。お金の価値観が合わないのです。本気で離婚したいと思うこともあります。

過剰で少しおかしい節約を、改善させる方法はないでしょうか。

【相談者プロフィール】

・36歳、専業主婦 ・夫:37歳会社員 ・長男:小1

・手取り収入:月収28万3,000円

・年間ボーナス:約80万円

・貯金額約:530万円

・毎月の支出の目安: 25万6,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万8,000円(家賃・管理費)

・食費:3万2,000円(外食含む)

・水道光熱費:1万8,000円

・通信費:2万7,000円(スマホ2台、固定電話)

・生命保険料:4万1,000円

・日用品代:5,000円

・医療費:2,000円

・教育費:8,000円

・交通費:6,000円

・被服費:3,000円

・交際費:2,000円

・娯楽費:2,000円

・こづかい:2万円

・その他:1万2,000円

横山:確かに支出はかなり絞られており、貯金も頑張られていると思います。ですが、夫がいうように、「老後資金には足りない」金額です。教育費も必要ですしね。ただ、お金を貯める目的のために、生活が窮屈だと感じる節約は、ストレスがたまり、生活の満足度も薄く、あまりよいとは言えないですね。節約の仕方を変え、無理なく老後に向けて備えていける方法を、考えていきたいところです。

本当に「無料が得」なのか

費用のかかるものを手放す、利用の仕方を見直すという支出のカットの仕方は賛成ですが、夫の言う「無料が得」「塾代はもったいない」という、先を見ない節約の方法は、この先の失敗につながらないのか心配な気もします。

相談者様が言うように、無料の生命保険相談では販売側に有利なように手数料が高いものを提示優先されたりするケースもありますし、不要な保障を勧められ、保険料が上がってしまう可能性もあるでしょう。必要以上の保障分の保険料は毎月少額でも、長い目で見るとお金の払い過ぎになるかもしれません。

また、お子さんの塾などについては、小学1年生ではまだ早いという考え方もあるでしょうし、まずは学校で基礎を、と夫が考えているのなら、今は検討すべき時ではないと判断できますが、「お金がないから」という理由は、少し違いますよね。

夫は、単に表面に見える損得だけで判断しているようにも感じますが、いろいろ考えているのに説明が面倒で「お金がない」で済ませているのかもしれません。

一度、相談者様が考える支出の必要性と、夫が思っている支出が不要な理由を、しっかりと話し合ってみてはいかがでしょうか。意見のすり合わせができ、納得できることが増えるかもしれません。

固定費はしっかり削減、変動費はその次

夫が節約、節約というのなら、まずは固定費をしっかり節約するように検討していきましょう。変動費はその次です。変動費を頑張りすぎると、生活が窮屈で貧しい気持ちになってしまうことが多いからです。おいしいものを食べて「明日も頑張ろう」と思えることもありますし、しっかりコントロールして、楽しみながらお金を使えるようにしていきたいものです。

とはいえ、今もかなり節約されていますから、見直しどころと言えば、生命保険料と通信費、特にスマートフォンの利用料でしょう。よく使う部屋の電球をLEDにしたり、節水シャワーヘッドを利用して自然に水道光熱費を下げる工夫をされてもよいと思います。

私たちは日々生きており、やはり楽しみや充実感というものがなければ、「何のために働いているんだ……」と疑問を持つこともあるかもしれません。節約は単に支出を下げるのではなく、必要な部分はしっかり払いつつ、不要な支出はカットするのが上手くいくコツ。状況によっては掛けたいところに回しましょう。支出のメリハリをつけるほうが、長続きしますし、苦痛も少ないのです。それでも、どうしても収入が足りないというのであれば、相談者様が少し働いて補うなど、取れる策はいろいろあると思います。「節約はこうするしかない」という夫の思い込みを少し柔らかくするために、ぜひ、話し合ってみてください。

老後資金づくりの方法は貯金だけに限らない

夫が老後資金を心配していることは決して悪いことではありません。年金受給額も少し目減りすると言われていますし、老後資金は自分で準備すべきものと考えたほうがよいでしょう。

頑張っても思うようにお金が貯まらない、資金ができないと感じるのなら、資産形成の方法の一つとして、投資を取り入れることを考えてもよいかもしれません。投資を積立で長期間取り組むと、複利の恩恵を受け、次第に資産が膨らんでいく可能性もあるのです。

ネット上で「積立シミュレーション」をするとイメージしやすいでしょう。現状の月の余剰金のうち2万円を積立投資に充て、3%で20年間運用できた場合、元金は480万円、運用益が176万円ほどとなり、総額656万円ほどの資産ができるとイメージできます。毎月の支出をコントロールし、もう1万円積立可能額を増やせたら、先程と同じ条件で元金は720万円、運用益は265万円ほどが見積もれ、総額985万円ほどの資産ができるイメージです。実際は変動がありますから、シミュレーションとは多少異なる結果となるでしょうが、貯金だけで資産形成を考えるよりも、効率が良いと感じていただけるのではないでしょうか。

運用を始めるなら税制優遇制度を利用しよう

通常は運用益から20.315%の税金がとられますが、NISA、iDeCoといった税制優遇制度を利用すると税金がとられませんので、利益分を全額受け取ることができます。ある程度投資を理解して始めると、夫の「お金が足りない」不安も軽減し、より効率のよいお金の貯め方、使い方を考えられるようになるかと思います。

恐らく、家計を変える、夫を変えるきっかけは、相談者様が軸になり作るしかないのではないかと思います。大変かもしれませんが、頑張ってみて、少しでも良い家計と家庭を作ってください。応援しています。

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