ばら積み貨物船 帆でCO2軽減 世界初搭載へ、商船三井と大島造船所が開発

最大の高さ54メートルに伸ばした硬翼帆=西海市大島町、大島造船所

 商船三井と大島造船所(長崎県西海市)は24日、共同開発した軽量で巨大な「ウインドチャレンジャー帆(硬翼帆)」を報道陣に公開した。同造船所から商船三井に10月引き渡すバルクキャリアー(ばら積み貨物船)に搭載。風力で船の推進力をアシストし、燃料消費と二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす。
 海運業界でも脱炭素の動きが加速している。2018年、国際海事機関(IMO)は50年の目標として船舶の温暖化ガス排出総量を08年比で半分にすると定めた。硬翼帆の開発は09年から東大を主体に産学共同研究としてスタート。18年から2社が引き継ぎ「実用化の手前」までこぎ着けた。バルクキャリアーに帆を搭載するのは世界初。
 帆は幅15メートル。高さ54~23メートルの範囲で上下に伸縮できる。鉄製枠に繊維強化プラスチック(FRP)を張り、強度と軽さを両立。船首付近の甲板上に設置し、頂部のセンサーで風向や風力を検知。横風や向かい風も、帆の向きや高さを自動制御し推進力にする。大島造船所子会社で船舶用クレーン製造の相浦機械(佐世保市)が駆動装置を設計した。

硬翼帆を搭載した貨物船のイメージ図(商船三井提供)

 搭載船は長さ235メートル、幅43メートル、9万9千トンで燃料は重油。東北電力の専用船として就航する。帆を1本設置した場合、燃費縮減効果は同型船と比べ、日本-オーストラリア航路で年間5%以上、カナダ航路で同8%以上を見込む。将来、液化天然ガス(LNG)を燃料に使う船に設置すればさらにCO2を削減できる。
 大島造船所の平賀英一社長は会見で「来年創立50周年を迎える。(硬翼帆の活用)プロジェクトを積極的に推進し、この先10年、20年、50年を見据え先端を走りたい」。商船三井の杉本義彦技術部長は「水素など非炭素系燃料の時代が来ても、貴重で高価。省エネ技術として風力の利用は地球環境保全に役立つ」と話した。


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