アメリカ株の下落局面で新興国株が注目される理由と投資方法

米国の株式は複数回の利上げとテーパリングが予定されており、ここ数年のような成長は期待できないという見方から、2022年の米国市場は年初から下落気味です。米国に変わる投資先として、その他の先進国や新興国も投資先の候補として考えられます。

新興国を投資対象として考えている人は、そのGDP(国内総生産)の成長率を期待していることでしょう。GDPは「一定期間内に、その国で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値」のことなので、人口増加が激しい国や、生産性がこれから発展するエリアは、GDPの成長率が高くなることが期待されています。しかし地政学リスクなどもあり、不安定な投資対象でもあります。

今回は、新興国は本当に投資対象になりえるのかについて考えていきたいと思います。


新興国の株式市場の魅力とは

一口に新興国といっても、その定義は曖昧です。世界各国を、大きく2つにわけると、先進国と発展途上国ということになります。発展途上国の中でも特に経済規模が大きく、発展してきている国々を新興国(エマージェンシーカントリー)と呼んでいるのが一般的です。例えば、中国やインド、ブラジル、南アフリカなどは新興国に数えられています。

この新興国は、今後も人口増加や大きな発展が期待されているのですが、それが単純に株価として成長していくとはいいきれません。
注意点としては、
・GDPが増えても経済が成熟していないと株価が上がるとはいいきれない
・通貨の信用がすくないため為替リスクがある
・政府が安定していない国も多く、カントリーリスク、地政学的リスクもある
・さまざまな要因で株価が乱高下しやすいのでボラティリティ(価格変動)が大きい
などです。

例えば、ウクライナに侵攻したロシアも新興国に数えられていますが、2020年3月現在ではルーブルの価値は大きく下落しました。ロシアの国債がデフォルト(債務不履行)する可能性も言われており、ロシアの株や通貨に投資をするのは非常にリスクが高い状態になっています。

インデックス指数を算出する指数算出会社のMSCIやFTSEラッセルも、主要指数からロシア株を除外する発表をしています。このカントリーリスクや地政学リスクはロシアだけでなく、中国やその他の国も同様で、それまでの常識が通用しなくなる可能性をはらんでいます。

それでも、長期でみるとまだまだ成長する可能性もありますし、短期でみた場合もボラティリティが大きいため、乱高下を逆手にとった投資上級者にとっては投資妙味のある市場とも言えます。

投資信託で買う場合どのようなファンドがあるか

新興国株に興味を持ったが、個別株に投資するのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。そこで、投資信託で買う場合のファンドを紹介します。

まず、新興国のETF(上場投資信託)として有名なのが、バンガード社がだしているVWO(バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF)です。VWOは、FTSEエマージング・マーケッツ・インデックスに連動する投資成果を目指しており、ブラジル、インド、台湾、中国、南アフリカなど、世界中の新興国市場で大型・中型株を保有してる時価総額加重型のETFになります。2022年2月末時点でのVWOの直近5年間の平均リターンは6.7%のプラスです。

ここ数年のパフォーマンスは先進国の株価成長には劣りますが、それでも過去30年間をみると、先進国の株価成長を新興国株が超えていた期間も多くあります。

次に、新興国に投資する投資信託で信託報酬が安く純資産額が大きいのが以下の2つです。

SBI・新興国株式インデックス・ファンド

SBI・新興国株式インデックス・ファンドは、SBIアセットマネジメントが運営する投資信託で2017年12月に設定されました。2022年2月末時点で信託報酬は約0.18%と非常に少なく、純資産額も約131億円集まっているので償還リスクも低いといえるでしょう。※

このファンドは、VWOと同じくFTSE エマージング・インデックス(円換算ベース)の指数に連動する投資成果を目指して運用されています。FTSE エマージング・インデックスは
新興国(エマージング)20ヵ国以上の各国市場の時価総額の90-95%ほどをカバーする広範なインデックスと言えます。

eMAXIS Slim新興国株式インデックス

eMAXIS Slim新興国株式インデックスはMSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)をベンチマークとし、同指数と連動する投資成果をめざして運用を行う投資信託です。純資産額は約777億円となり、新興国の投資信託としては最も純資資産額が大きいです。新興国(エマージング)25ヵ国以上の大型株・中型株を対象に分散投資し、各国市場の時価総額上位約85%をカバーしています。

2つのファンドの違いは、MSCIは韓国が新興国に含まれますが、FTSEは韓国を先進国に含めているので差が出ます。また、MSCIの方が大型株を中心にカバーしており、投資対象者数はFTSEの方が多くなります。どちらも約40%が中国となっており、全体的に中国の動向によって株価が上下に動くといって良いでしょう。

新興国株式に投資をする場合、保有比率は何%がよい?

新興国株式は、通貨リスクや地政学リスクをはらむので、乱高下が激しく安定的ではないですが、人口増加やGDPが増える予測など、将来性は期待されています。しかし、期待値がすでに株価に織り込まれている場合もあるので、GRPが成長しても投資家の期待値より高くなければ株価はあがらないことがあります。

また、全世界株式インデックスなどを持っていれば、当然その中に新興国も組み込まれているので、先進国と新興国を自動的にバランス良くもつことが可能になります。ただし、全世界株式インデックスの場合は、売却時に全体をマルっと売ることしかできないのがデメリットです。

例えば、先進国は株価が下がっているが、新興国は高値圏にあるとしたら、売却する際は新興国のみを売りたいものです。このように個々のアセットクラスを売却可能な形にしておくのもポートフォリオを構成する戦略のひとつです。

大きな成長の可能性とさまざまなリスクを内包している新興国の時価総額は、全世界の10%程度です。ポートフォリオの中に組み込む場合も10%を目安に考えるとよいのではないでしょうか。

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