五島のツバキ使ったクラフトジン 神奈川から移住・門田さん「物語のある酒を造りたい」

門田さんらが開発、販売を目指す「GOTOGIN」

 長崎県五島列島に多く自生するツバキを使ったクラフトジンを-。「五島つばき蒸溜所」代表取締役の門田邦彦さん(51)は、約30年間勤めた大手ビールメーカーを退職し今月、神奈川県から五島市に移住した。戸岐町にある半泊教会のそばに蒸留所の建設を進めている。「大好きなお酒を自分で造り、世界の人たちに届けたい」と語る。

 大阪府出身の門田さんはキリンビールに入社後、営業担当を経て、主力の「一番搾り」シリーズなどのマーケティング、商品開発に従事してきた。
 年数を重ねながら芽生えてきたのは、土地の記憶や、そこで生きる人たちの営みなど「風土」に根差した酒を自分の手で生み出せないかという思いだった。「物語のある酒を造りたい」。50歳を機に独立し、香りなど土地の特色を出しやすいジンを造ることにした。
 候補地の一つ、五島市に昨春から数回足を運んで出合ったのがツバキ。住民と交流する中で、種が古くから食用油や化粧品など広く利用されていることを知り、香り豊かで、まろやかな味わいを生み出す可能性を感じた。波静かな小さな入り江、地元の信徒が大切に守り続けてきた築100年の半泊教会。風景も印象に残った。さらに湧き水を調べると、目指す味わいに最適な超軟水だった。この地で製造すると決めた。

ツバキを使ったクラフトジンの蒸留所の建設予定地=五島市戸岐町

 蒸留所は約200平方メートル。今年9月に完成する予定。現在クラウドファンディングで建設費用などの資金調達を図っている。12月からの販売を目指しており、商品名は「GOTOGIN(ゴトジン)」。原酒に香り付けする植物のボタニカルに、主に五島産ツバキの種を使い、じっくりと味わいを引き出す製法を用いる。今後は、同じくキリンで長年、商品開発などに従事してきたかつての同僚も五島に移住して加わる。
 門田さんは「誰かを幸せにする、物語に満ちた酒を造るのが夢。この土地を表現する『風景のアロマ』を感じるジンを造りたい」と意気込みを語る。


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