公述人7割「反対」 長崎IR公聴会 〝コロナ禍、資金調達〟実現性を危惧

IR区域整備計画案で示した長崎IRの全体イメージ(CAIJ提供)

 長崎県が28日に佐世保市で開いたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の公聴会では、公述人の7割に近い11人がIR区域整備計画案に反対する姿勢を示した。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人が激減する中、経済波及効果の実現性などに疑問が集まった。
 公述人として登壇した医師男性は新型コロナの終息は見通せないとし、IRが成功するかどうかは「五分五分」との見解を示し、「IR事業自体がギャンブルだ。(医療)専門家の意見をもう一度聞くべきだ」と訴えた。
 IR設置運営事業予定者は、開業に向けて総額約4383億円の資金を調達する方針だが、出資や融資をする企業名は「4月中旬までに示す」としている。これに対し、公述した弁護士男性は「IRを確実に設置できる根拠が乏しいと言わざるを得ない」と指摘。経済波及効果は「仮定に仮定を重ねた推計で検証が不能。実現可能性が大変疑わしい」と問題視した。
 カジノによって本県のイメージが損なわれると心配する声もあり、公述人の女性は「長崎で歴史や平和を学ぶ修学旅行が減少する」と危惧した。
 公聴会は、県が国にIR区域の認定を申請する前に必要な手続きで、県からの応答はなかった。県企画部の吉田慎一政策監は取材に「公述人の意見に対する県の考えは県ホームページで後日公表する。意見は計画作成の参考にしたい」としている。

◎年間売り上げ、2715億円 県など開業5年目試算

 長崎県などがまとめたIR区域整備計画案では、IRの敷地は約32ヘクタールで、2027年秋ごろの開業を目指している。
 開業5年目の年間売り上げは約2715億円で、カジノ部門が全体の77%を占める。経済波及効果は建設で5342億円、運営で年間3279億円と試算。区域内の雇用者数は約9700人としている。

IR区域整備計画案の公聴会で出た主な意見

 カジノ行為だけに使う区画はIRの延べ床面積の2.38%に当たる1万5千平方メートル。バカラなど富裕層向けのゲームができるテーブルを約400台、スロットなどの電子ゲームを約3千台配置する。
 IRに含まれるMICE(コンベンション)施設は国内最大規模で、国際会議場部分に計1万4400人、展示場部分に計1万3140人を収容できる。
 宿泊施設はタワーホテルや旅館など4タイプあり、計約2500室を備える。日本の魅力を発信する「ジャパンハウス」や先端医療を提供するメディカルモール、ショッピングモールも整備する。


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