長崎県被爆者手帳友愛会、解散へ 「明日はわが身」「組織限界」 他の被爆者団体も危機感

昨年8月9日に菅首相(左、当時)と面会し、要望書を手渡した本県の被爆者5団体の代表者ら=長崎市内(代表撮影)

 長崎の被爆者5団体の一つ「県被爆者手帳友愛会」が3月末で解散することが明らかになった29日、他の団体は「来るべき時が来た」「明日はわが身」と危機感を募らせた。会員の高齢化や活動資金の不足といった共通課題を抱え、活動を継続するための組織体制構築は急務。被爆者運動は岐路に立たされている。
 友愛会が1979年に分離する前の母体だった「県被爆者手帳友の会」の朝長万左男会長(78)は「来るべき時が来たかと思う。5団体は事あるごとに集まって議論し、考えを発信してきた。力がそがれるような気持ち」と肩を落とす。
 友愛会からの入会希望者には、被爆地域拡大を求める被爆体験者も一定数が含まれる見込み。「被爆地域拡大運動のサポートにも取り組む」と意気込む。その上で「被爆2、3世の会員を増やす必要がある。賛助会員のような形で、一般の人に協力してもらう形も広げたい」と述べた。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)も活動の財源不足が悩みの種だ。収入源の大半を占めていた売店「被爆者の店」が新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用客が減少し、2020年9月にテナントが撤退。緊急支援募金で約1千万円が寄せられたが、2年後には活動資金が底をつく恐れがある。田中重光会長(81)は「ずっと一緒にやってきたので、残念至極。被爆者の組織がなくなるのは時間の問題。活動を続けられているのは『再び被爆者をつくるな』という気力」と静かに語った。
 被爆者5団体は毎年8月9日に首相に要望書を提出するなど、被爆者運動の中核を担う。県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(82)は「明日はわが身。どこも組織としての限界が近づいている」と懸念する。担い手不足は深刻で「被爆2世、3世にどう活動をつなぐか真剣に考える必要がある」と語る。
 会員の負担軽減のため会費徴収を17年以降止めた長崎原爆遺族会の本田魂会長(78)は「高齢化して動ける人がおらず、被爆者だけで会を存続させるのは不可能だ」と漏らした。
 長崎市の田上富久市長は友愛会の解散決定に「これまでの活動に敬意を表したい。時代の流れを感じ、残念」と受け止める。市は被爆者団体の運営費補助金を支給しており「財源面だけでなく、いろいろな形での活動をどうするか、具体的に検討する必要がある。発信力が弱くなることがないよう市としてできることを努力したい」と語った。


© 株式会社長崎新聞社