株価が下がったときこそ実践したい「積立投資」の強みとは?

資産運用を始めた後の“難局”として、株価などが下落傾向の「市場が軟調なとき」が挙げられます。

せっかく購入した投資商品の価値が減っていくのを目の当たりにすると、誰でも気持ちが揺らぐからです。なかには、「投資に手を出すんじゃなかった!」と、投資商品を売却したり、積立をやめてしまったりする人もいるでしょう。

しかし、毎月決まった金額を投資し続ける「積立投資」は、下げ相場のときこそしっかり続けることで、将来の運用成果が期待できる投資方法なのです。下げ相場のときも気持ちにゆとりをもって投資を続けられるよう、積立投資への理解を深めましょう。


積立投資は下げ相場ほど購入できる口数が増える

積立投資の魅力は、投資商品の価格が下がるほど、同額で購入できる口数が増えることにあります。次の図表1(下げ相場の後、回復局面に移ったときの資産評価額の例)にて、下げ相場のなかでも投資信託を積立投資し続けた場合の効果を見てみましょう。

<図表1の8カ月目の資産評価額(投資総額:8万円)>

一括投資:56,000円(24,000円の含み損)
積立投資:80,843円(約800円の含み益)

ご覧の通り、一括投資では含み損が出ているのに対して、積立投資ではわずかですが含み益が出ています。このように積立投資の場合は、長く下げ相場が続いても市場が回復期に入れば、投資を始めたときまで価格が戻っていなくても、利益を得ることができるのです。

一方で、もし下げ相場の途中で積立投資を中断してしまうと、たくさんの口数を買う機会を逃してしまいます。下げ相場のときほど、平均購入価格を引き下げるために、投資を継続したほうがよいのです。

上げ相場は一括投資のほうが強い

積立投資は下げ相場に強い反面、実は上げ相場には弱い投資方法です。上げ相場のケースについて、次の図表2(上げ相場の後、下落局面に移ったときの資産評価額の例)で見てみましょう。

<図表2の8カ月目の資産評価額(投資総額:8万円)>

一括投資:104,000円(24,000円の含み益)
積立投資:82,862円(2,862円の含み益)

このように、積立投資では含み益が約3,000円であるのに対して、一括投資は2万4,000円となっています。上げ相場のときは、積立投資よりも一括投資のほうが利益を得られやすいのです。

そのため、下げ相場が続く時期は積立投資を続けておき、上げ相場になったら追加資金で一括投資をすると、将来の運用利益は大きくできると期待できます。下げ相場に備えたいと思ったら「投資予備資金」を手元に用意しておき、いつでも追加投資できる状況を作っておくとよいでしょう。

ただ、今が上げ相場か下げ相場かを読むことは容易ではありません。今日までは相場が下がっていても、明日からは上げ相場に変わるかもしれません。相場の予想はプロでも難しいものです。投資初心者は無理をせず、下げ相場に強く、上げ相場でもある程度の利益が期待できる積立投資をコツコツ続けておくのがおすすめです。

下げ相場に備えてメンタル対策を

いくら頭で「下げ相場が積立投資に有利」だと理解していても、実際にどんどん減っていく自分の資産を目にするのは精神的にきついものです。そのため、下げ相場に備えてメンタル対策を講じておきましょう。

・投資のことは一旦忘れてしまう
下げ相場の時期は、意識して資産評価額を見ないようにするのがおすすめです。投資をしていることを忘れて過ごしても良いくらいです。

積立投資のメリットは、手間がかからないことも挙げられます。自動で積立投資をする設定にしておけば、証券会社のマイページにログインして買い注文をする必要がありません。投資のことはいったん忘れて、日々の家事や仕事、趣味などに打ち込んでいれば、相場の上げ下げに一喜一憂せずに過ごせます。

・売りにくい仕組みで買っておく
下げ相場に負けずに積立投資を続けるには、税制優遇制度を活用して、できるだけ売りにくい環境を整えておくことが大切です。具体的には、つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)などがおすすめです。

iDeCoは原則60歳まで資金を引き出せないので、自然と「相場がどんなでも、60歳まで運用を続けるしかない」となりやすいです。また、つみたてNISAはいつでも売却が可能ではありますが、利益が出ていないと制度の恩恵は得られません。「今売ったら、非課税枠を無駄にしてしまう」という意識を持ちやすいので、下げ相場でも売却しにくくなることが期待できます。

投資資金は「使う時期」が最も大事!

積立投資をする際に最も大切なことは、「投資に回した資金をいつ使うのか」を明確にしておくことです。

・下げ相場で使う時期が来てしまうと…
もし下げ相場の途中に子どもの進学やマイホーム購入などで運用中の資産を売却する必要が出てくると、損失を確定せざるを得なくなります。積立投資がいくら下げ相場に強いといっても、最終的には相場が上がってくれないと、利益を得ることはできません。いつ相場が回復し始めるかはわかりませんので、少なくとも数年以内に使う資金については投資に回さず、預貯金で確保しておくのが安心です。

・上げ相場の最中に利益確定しておこう
下げ相場が終わって市場が回復期になったら、利益を確定するチャンスになります。投資に回していた資金を使う時期が数年後に迫っていたら、相場が良いときに利益を確定しておくのが安心です。または、保有する商品を株式中心から債券中心に変えるなど、リスクの低い資産配分に変更するのも有効です。


積立投資を無理なく続けるためには、自分のライフプランに合わせて投資をする時期や金額を決めてから投資を始めることが重要なのです。そして、積立投資の運用中は、「下げ相場は継続(または追加投資)のチャンス!」「上げ相場は利益確定(またはリアロケーション)のチャンス」ということを覚えておきましょう。

© 株式会社マネーフォワード